恋と夢と愛と 第二幕


「咲さんはなんでも持ってますよね。地位も名誉も……、イケメンな彼氏までいるじゃないですか。世界的に活躍する人気モデルの。……国民的女優なんて呼ばれて、みんなに愛されて、八尋だって……、」

野津くんの名前に眉を顰めた。

アリサちゃんはおもむろに、ハイブランドのバッグの中から、食材を切る道具の包丁を取り出した。

そのアンバランスさが可笑しかった。

料理をするんじゃなくて、私を刺し殺す目的で使う為にわざわざ持って来た。

悪い考えが頭をよぎる。

……ここで私がアリサちゃんに殺されたら、野津くんは罪の意識、罪悪感から私をずっと忘れないでいてくれるだろうか。


「寝たよ。」

私の言葉にアリサちゃんの顔から、表情が抜け落ちた。

「野津くんと、この部屋で。」

アリサちゃんの目に、私への殺意が明確に宿った。

本気、だったのかは分からない。

脅すだけ、だったのかも。


でも、今、私が背中を押してあげた。

怒りに目が血走り、

「返して!!あたしの八尋を返してよ!!」

アリサちゃんが突進する様にぶつかって来て、包丁が奥深くまで刺さった。

「なんで、あんたばっかり愛されるのッ!!」

包丁を抜かれて、また刺された。

アリサちゃんは三回目も刺そうとしたが、血で滑り包丁を床に取り落とした。

私の頭は怖いくらい冷静だった。

内臓が傷付いたのか、血が逆流して口から溢れた。


私はこれまで刺される役も、死体の役も、やった事が無い。

いつか、やってみたいと思ってはいた。

けど、もう無理。


涙でぼやける視界の中で、野津くんの顔が浮かんだ。

……会いたい。

私の意識はそこで途切れた。