本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました。

 ____ドクン、と心臓が脈打った。

「ユージン様から……私たち宛にそれぞれお手紙……?」
「はい。こちらでございます」

 そう言って侍女から差し出されたのは、確かに私とビアンカに向けた二通の手紙。

「おねぇさまはわかりますけど……どうして私まで?」

 ビアンカが不思議そうに首を傾げる。
 けれど、私達には何ら不思議なことではなかった。

 だって、ユージン様はビアンカの話をしている時、あんなに嬉しそうにしていたんだもの……。

 きっと婚約者は、私じゃなくてビアンカに決まったのでしょうね。
 この手紙は、そのことを謝罪する手紙……なのかしら。

 そんなことを考えながら、封を開ける。

 震える指で封筒の中から一枚の便箋を取り出すと、そこに書いてあったのは……

「……『また君のお菓子が食べたい』……え、これだけ……なの?」

 見間違いかと思ったけれど、確かに便箋はこれ一枚で、書いてあるのもこの一行のみ。

 ユージン様、あまりにも私に興味が……なさすぎるのではなくて……?
 お菓子だけは気に入ってくださってるみたいだけれど……。

 ____ビアンカの手紙には、なんて書いてあったのかしら。

 ふとそう思って、ビアンカの方を見た。
 すると、ビアンカは少し顔を赤らめながらも笑顔で手紙を読んでいる。

 ……便箋が、二枚もあるわ。

「ユージン様って、わかりやすい方なのね……」

 私がそうぽつりと呟くと、ビアンカにも聞こえてしまっていたらしい。
 照れたように微笑みながら、「私もそう思いますわ」と嬉しそうに言った。

 心臓が、苦しい。

 それでも、ユージン様からもらったこの手紙が、嬉しくて嬉しくて堪らない。
 それが、例え一行だったとしても……。

 どうしてこんな恋なんてしてしまったの、私……。

 涙が浮かびそうになるのを必死で堪えていると、突然書斎の扉が開いた。

「ベルナデッタ、ビアンカ! 二人とも揃っているな。キャントレル伯爵からおめでたい書状が届いたぞ!」

 入ってきたのは父だった。

 おめでたい書状……そんなの、大体想像がついてしまう。
 きっと、婚約者が正式に決まったのだわ。

 楽しそうに「わぁ!」と声をあげるビアンカの隣で、私は拳を強く握りしめて俯いた。

 父はそんな私の様子には気付いていないようで、嬉しそうに言葉を続ける。

「キャントレル伯爵子息から正式な婚約の申し出があったんだ」

 ほら、やっぱり。
 なら、相手もきっと…………

「よかったな、ベルナデッタ! これからも、ユージン様と仲良くするんだぞ!」
「…………え?」

 ____私? ビアンカではなく? なぜ?

 私が衝撃のあまり呆然としていると、ビアンカが心の底から嬉しそうに「ご婚約おめでとうございます!」と拍手してくれた。

 私はどうしても気になって、ビアンカに問いかける。

「ありがとう、ビアンカ。……だけど、さっきユージン様からの手紙を見て照れているように見えたのは、一体なんだったの……?」

 すると、ビアンカは手紙の内容を思い出したのか、また少し顔を赤らめながら首をブンブン横に振った。

「ご、ごめんなさい! おねぇさまにはお伝えできません! でも、決しておねぇさまを傷つけるような内容ではないのです!」
「そう……なの」
「はい!」

 ビアンカは真っ直ぐな目をして頷いた。
 この子は、こんな嘘をつくような子じゃない。

 なら一体、ユージン様はビアンカに何を伝えたの?
 どうして、ユージン様は私を婚約者に選んでくれたの?

 嬉しいけれど、ユージン様のことがわからない。

 晩御飯は婚約祝いですごく豪華なメニューだったけれど、私には気になることが多すぎて……何も味わうことができなかった。



 ____ユージン様、あなたは一体何をお考えになっているのですか……?