目覚めたら、最推しの腕の中でした~1度終わった私の人生、もう一度恋をしました。~

結婚式を。

すると決めてから。

私たちの。

『結婚会議』は。

さらに。

現実的になった。

「招待客」

陽向が。

ノートを開く。

「まず」

「ASTER四人」

「うん」

「事務所の人」

「うん」

「ドラマ関係」

「神崎さん」

「……」

陽向の。

ペンが。

止まる。

「何?」

「いや」

「書いて」

「はい」

渋々。

『神崎悠人さん』

と。

書く。

「さん付けなんだ」

「大人だから」

「さっきまで」

「警戒対象って」

「言ってたのに」

「それとこれとは別」

私は。

笑った。

そして。

次。

陽向が。

何も言わず。

空白を。

一つ。

残した。

そこに。

書く名前。

分かっている。

前の夫。

「……」

私も。

黙った。

◇◇◇

子どもたちは。

もちろん。

全員。

招待する。

それは。

最初から。

決まっている。

問題は。

その父親。

私の。

一度目の人生の。

夫。

今は。

五人の子どもたちの父親として。

私と。

繋がっている人。

「美月」

陽向が。

ペンを置いた。

「やっぱり」

「迷ってる?」

「……うん」

「呼びたい?」

「それも」

私は。

少し。

考える。

「呼びたいって」

「いうより」

「呼ばないって」

「最初から」

「決めるのが」

「違う気がする」

陽向が。

頷く。

「うん」

「だって」

「子どもたちからしたら」

「パパで」

「……」

「私たちが」

「結婚したあとも」

「その関係は」

「変わらない」

「うん」

「それに」

私は。

テーブルの。

指先を。

見つめる。

「私の人生の」

「三十四年間の中に」

「いた人だから」

陽向は。

何も。

言わず。

聞いている。

「幸せだったことも」

「苦しかったことも」

「喧嘩したことも」

「子どもたちが」

「生まれたことも」

「……」

「全部」

「なかったことには」

「したくない」

「うん」

「だから」

私は。

顔を上げる。

「来るかどうかは」

「本人に」

「決めてもらいたい」

陽向が。

少し。

笑った。

「じゃあ」

空白に。

文字を書く。

『子どもたちのお父さん』

名前ではなく。

そう。

書いた。

私は。

それを見て。

少し。

胸が。

温かくなった。

今の。

関係。

そのものだった。

◇◇◇

招待状を。

渡す日は。

思っていた以上に。

緊張した。

子どもたちと。

会ったあと。

前の夫に。

少し。

時間をもらった。

「話って?」

「うん」

私は。

バッグから。

一通の。

封筒を。

取り出す。

彼が。

それを。

見る。

「……結婚式?」

「うん」

「するんや」

「することにした」

「そっか」

封筒を。

差し出す。

でも。

手が。

少し。

止まる。

「これ」

「……俺?」

「うん」

夫が。

目を。

丸くする。

「俺を」

「呼ぶん?」

「……」

私は。

頷いた。

「無理に」

「来てほしいとは」

「言わない」

「……」

「来たくなかったら」

「来なくていい」

「子どもたちだけ」

「来てもらっても」

「大丈夫」

「うん」

「でも」

私は。

ちゃんと。

言いたい。

「選択肢として」

「あなたにも」

「渡したかった」

夫は。

しばらく。

封筒を。

見ていた。

◇◇◇

「変やな」

「え?」

夫が。

苦笑する。

「元嫁の」

「結婚式に」

「呼ばれるって」

「……そうだよね」

「しかも」

「相手」

「天城陽向やろ」

「うん」

「お前」

「昔」

「テレビ見ながら」

「この人ほんま好きって」

「言うとったよな」

「……」

顔が。

熱くなる。

「今それ言う?」

「いや」

夫が。

少し笑う。

「すごい話やなって」

「私も」

「そう思う」

二人。

少し。

笑った。

でも。

笑いが。

落ち着いたあと。

夫が。

真面目な顔になる。

「美月」

久しぶりに。

名前で。

呼ばれる。

「何?」

「俺」

「行ったら」

「邪魔にならん?」

「……」

「天城さん」

「嫌じゃないん?」

私は。

首を振る。

「陽向とも」

「話した」

「……」

「複雑な気持ちは」

「あるって」

「言ってた」

「やろな」

「でも」

少し。

笑う。

「私の過去を」

「自分との結婚で」

「塗り替えたいわけじゃないって」

夫が。

静かになる。

「……そっか」

「うん」

「だから」

「陽向が」

「呼んでもいいって」

「言ったから」

「あなたに」

「渡してるわけじゃない」

「……」

「私が」

「招待したいと思ったから」

「渡した」

夫は。

少し。

驚いたように。

私を見る。

「……変わったな」

「また?」

「いや」

少し。

笑う。

「前なら」

「天城さんが」

「どう思うか」

「俺がどう思うか」

「子どもらがどう思うか」

「全部」

「先に考えて」

「自分がどうしたいか」

「最後やったやろ」

胸が。

小さく。

揺れた。

「そうかも」

「今は」

「ちゃんと」

「自分で」

「呼びたいって」

「言うんやな」

「……うん」

私も。

少し。

笑った。

「呼びたい」

今度は。

はっきり。

言えた。

◇◇◇

夫は。

すぐには。

返事をしなかった。

「ちょっと」

「考えていい?」

「もちろん」

「子どもらにも」

「聞きたい」

「うん」

「俺がおることで」

「変に」

「気使わせたくないし」

「うん」

「それに」

少し。

視線を。

落とす。

「俺自身も」

「どういう気持ちに」

「なるか」

「分からん」

その言葉。

私は。

否定しなかった。

「そりゃ」

「そうだよね」

「うん」

「だから」

「来ないって」

「決めても」

「私は」

「何も思わない」

夫が。

少し。

笑う。

「それは」

「ありがたい」

そして。

封筒を。

受け取った。

「ちゃんと」

「考えるわ」

「うん」

◇◇◇

そのあと。

子どもたちと。

結婚式の。

話をした。

「ドレス!」

星が。

一番に。

反応した。

「ママ」

「どんなの着るの?」

「まだ」

「決めてない」

「一緒に」

「見に行きたい!」

「いいよ」

「ほんと!?」

顔が。

ぱっと。

明るくなる。

すると。

ほかの子も。

「僕も!」

「俺も!」

「見る!」

一気に。

増える。

私は。

思わず。

笑った。

「みんなで?」

「うん!」

「多すぎない?」

「ママ」

「一人で決めたら」

「変なの選びそう」

「失礼!」

星が。

笑う。

「じゃあ」

「女子代表で」

「私が行く」

「それ」

「女子とか関係ある?」

「ある」

「何が?」

「センス」

「ママよりある」

「……」

否定。

しきれない。

◇◇◇

一番小さい子は。

結婚式というものが。

まだ。

よく分かっていない。

「ママ」

「何?」

「けっこんしきって」

「なにするの?」

「うーん」

「ママと陽向が」

「みんなの前で」

「これから」

「一緒に生きていきますって」

「約束する日」

「ふーん」

興味。

薄い。

「ケーキある?」

「あると思う」

「行く!」

「そこ!?」

みんなが。

笑う。

そして。

以前。

少し。

複雑そうにしていた子が。

私へ。

聞いた。

「パパも」

「来るん?」

一瞬。

静かになる。

「招待状は」

「渡したよ」

「……」

「来るかどうかは」

「パパが」

「決める」

「そっか」

「来てほしい?」

私は。

聞いた。

その子は。

少し。

迷ったあと。

「……来てほしいかも」

「うん」

「だって」

少し。

言いにくそうに。

続ける。

「ママが」

「結婚するの」

「僕らだけ見て」

「パパだけ」

「知らんのも」

「変な感じする」

「……」

私は。

頷いた。

「そうだね」

星も。

静かに。

言う。

「私も」

「来てもいいと思う」

「うん」

「別に」

「パパとママが」

「また夫婦になるわけじゃ」

「ないし」

「うん」

「でも」

「私たちの」

「パパとママでは」

「あるから」

胸が。

温かくなる。

「うん」

「そうだね」

◇◇◇

その日の夜。

陽向へ。

電話した。

『渡した?』

「うん」

『どうだった?』

「考えるって」

『そっか』

「嫌?」

私は。

聞いた。

陽向が。

少し。

黙る。

『正直?』

「うん」

『ちょっと』

「うん」

『変な感じはする』

「……」

『だって』

少し。

苦笑する声。

『美月の元旦那さんが』

『俺と美月の結婚式にいるんだよ?』

「うん」

『冷静に考えたら』

『すごい』

「確かに」

二人。

笑う。

でも。

陽向は。

続けた。

『でも』

「うん」

『俺』

『子どもたちと』

『ちゃんと』

『これからも』

『関わっていきたい』

「……」

『だったら』

『お父さんとも』

『一生』

『完全に無関係って』

『わけにはいかないだろ』

「うん」

『だったら』

少し。

息を吐く。

『変な感じするから』

『避けるより』

『少しずつ』

『慣れたほうがいい』

胸が。

じんわり。

温かくなる。

「陽向」

『何?』

「ありがとう」

『うん』

「それに」

私は。

少し。

笑う。

「元夫が来ても」

「新郎は陽向だから」

電話の向こう。

完全に。

止まった。

「……陽向?」

『もう一回』

「言わない」

『美月!』

「ふふっ」

『今の』

『めちゃくちゃ効いた』

「何に?」

『全部』

「意味分かんない」

でも。

嬉しそうな。

声。

私も。

笑った。

◇◇◇

そして。

次に。

大きな問題。

ウェディングドレス。

「……多い」

ショップへ。

入った瞬間。

私は。

圧倒されていた。

白。

白。

白。

でも。

全部。

違う。

Aライン。

プリンセスライン。

マーメイド。

レース。

サテン。

袖あり。

袖なし。

「無理」

「ママ」

星が。

呆れる。

「まだ」

「一着も」

「着てないよ」

「だって」

「多すぎる」

「だから」

「試着するの」

「何着?」

「いっぱい」

「疲れる」

「ママ!」

今日は。

星と。

二人。

陽向には。

まだ。

見せない。

本番まで。

秘密。

「ママ」

星が。

私を見る。

「一個」

「お願い」

「何?」

「ちゃんと」

「自分が着たいの」

「選んで」

「……」

「陽向くんが」

「好きそうとか」

「みんなが」

「喜びそうとか」

「じゃなくて」

「……」

「ママが」

「これがいいって」

「思ったやつ」

胸が。

小さく。

鳴った。

「うん」

私は。

ドレスを見る。

今までなら。

どうしただろう。

体型。

年齢。

周りの目。

二回目の結婚。

いろんなことを。

考えて。

一番。

無難なものを。

選んでいたかもしれない。

でも。

今日は。

違う。

「……これ」

一着。

目に。

止まった。

柔らかな。

Aライン。

上半身には。

繊細なレース。

スカートは。

派手すぎず。

歩くたび。

光を。

ふわっと。

反射する。

「これ」

「着てみたい」

星の顔が。

ぱっと。

明るくなった。

「うん!」

◇◇◇

試着室。

ドレスを。

着せてもらう。

鏡の前。

カーテンが。

開く。

「……」

私自身が。

固まった。

鏡の中。

一ノ瀬紗良の。

顔。

白い。

ウェディングドレス。

でも。

その姿を。

見た瞬間。

不思議と。

違和感は。

なかった。

「あ……」

後ろから。

星の声。

振り向く。

星が。

口元を。

押さえている。

「どう?」

「……」

「星?」

目が。

潤んでいた。

「ママ」

「何?」

「綺麗」

胸が。

いっぱいになる。

「……ありがとう」

「ほんと」

星が。

笑う。

「すごく」

「ママっぽい」

私は。

もう一度。

鏡を見る。

ママっぽい。

その言葉が。

嬉しい。

一ノ瀬紗良の。

顔なのに。

ウェディングドレスを。

着ているのは。

ちゃんと。

私。

「これ」

私は。

鏡の中の。

自分を見る。

「好き」

星が。

笑った。

「じゃあ」

「これにしようよ」

「でも」

言いかける。

ほかも。

見たほうが。

似合うもの。

もっと。

「ママ」

「……」

「今」

「好きって」

「言ったよ」

私は。

止まった。

そうだった。

自分が。

好き。

それだけで。

選んでいい。

「……うん」

私は。

笑った。

「これがいい」

◇◇◇

星が。

スマートフォンを。

取り出す。

「写真」

「撮っていい?」

「いいけど」

「陽向には」

「絶対送らないでよ」

「分かってる」

「本当に?」

「本番で」

「泣かせたいから」

「目的そこ?」

星が。

笑いながら。

写真を撮る。

その瞬間。

私も。

笑った。

カシャ。

写真の中。

ウェディングドレス姿の。

私。

そして。

横には。

笑っている。

娘。

一度目の。

結婚式には。

いなかった。

私の。

娘。

それだけで。

これは。

前と同じ。

結婚式ではない。

全く。

新しい。

一日になる。

そう。

思えた。

◇◇◇

ショップを。

出たあと。

星が。

言った。

「ママ」

「何?」

「バージンロード」

胸が。

少し。

止まる。

「誰と」

「歩くの?」

「……」

考えて。

いなかった。

普通なら。

父親。

でも。

今の私には。

その形が。

しっくり。

来ない。

前の夫?

絶対。

違う。

子どもたち?

それも。

素敵。

でも。

私の中で。

何かが。

引っかかる。

「……一人で」

「え?」

星が。

私を見る。

私は。

少しずつ。

自分の気持ちを。

言葉にする。

「一人で」

「歩きたいかも」

「……」

「陽向のところまで」

「自分で」

「行きたい」

星が。

静かに。

聞く。

「ママ」

「誰かに」

「渡してもらうんじゃなくて」

「……」

「私が」

「自分で」

「陽向を選んで」

「歩いていく」

言いながら。

胸の中に。

すとんと。

落ちた。

これだ。

私の。

結婚式。

誰かに。

連れていってもらう。

未来じゃない。

自分で。

選んだ人の。

ところへ。

自分の足で。

歩いていく。

星が。

少し。

目を潤ませて。

笑った。

「いいと思う」

「うん」

「でも」

「何?」

「途中で」

少し。

にやっとする。

「私たちのこと」

「ちゃんと見てね」

胸が。

温かくなる。

「見るよ」

「絶対?」

「絶対」

「五人とも?」

「もちろん」

「パパ来たら?」

少し。

考える。

「……見る」

「うん」

「今まで」

「一緒にいた人たち」

「全部」

「ちゃんと」

「見て」

そして。

私は。

笑った。

「その先の」

「陽向のところに」

「行く」

◇◇◇

その夜。

前の夫から。

メッセージが。

届いた。

短い。

一文。

『結婚式、行くわ』

私は。

しばらく。

画面を。

見つめた。

続けて。

もう一通。

『子どもらも来てほしいみたいやし』

そして。

少しして。

『俺も、ちゃんと見届けたほうがええ気がする』

胸が。

じんわり。

熱くなる。

私は。

返信した。

『ありがとう』

それだけ。

すると。

また。

返ってきた。

『ただし』

「……?」

『泣いても笑うなよ』

思わず。

吹き出した。

『そっちこそ』

送る。

少しして。

『たぶん泣かん』

絶対。

分からない。

私は。

笑った。

◇◇◇

そして。

結婚式の日が。

少しずつ。

近づいていく。

ASTERの。

四人。

五人の。

子どもたち。

子どもたちの。

父親。

事務所の。

人たち。

神崎悠人。

それぞれの。

大切な人たち。

一度目の人生。

二度目の人生。

その両方に。

繋がる人たちが。

一つの場所へ。

集まろうとしている。

そして。

私は。

誰かに。

手を引かれるのではなく。

自分の足で。

バージンロードを。

歩く。

その先には。

天城陽向。

私が。

自分で。

選んだ。

未来。

ただ。

結婚式まで。

あとわずかとなった。

ある日。

ASTERのメンバーから。

陽向へ。

こんな提案が。

持ち上がった。

「披露宴」

「俺ら」

「何かやっていい?」

陽向は。

嫌な予感しかしない顔で。

四人を見た。

「……何する気?」

四人は。

顔を。

見合わせる。

そして。

にやっと。

笑った。

「それは」

「当日まで」

「新郎新婦には」

「内緒」

陽向の顔が。

引きつった。

「絶対」

「ろくなことしないだろ!」

けれど。

そのサプライズが。

結婚式当日。

私と陽向を。

大泣きさせることになるなんて。

このときの私たちは。

まだ。

知らなかった。