目覚めたら、最推しの腕の中でした~1度終わった私の人生、もう一度恋をしました。~

一番小さい子と。

会った日の夜。

私は。

なかなか。

眠れなかった。

でも。

前みたいに。

不安で。

眠れなかったわけじゃない。

何度も。

思い出していた。

小さな手。

『みづき』

と。

呼んでくれた声。

『こんど、ゲームしよ!』

と。

笑った顔。

ママとは。

呼ばれなかった。

私のことも。

覚えていなかった。

それでも。

もう一度。

会いたいと。

思ってくれた。

「……それでいい」

私は。

ベッドの中で。

小さく笑った。

すると。

スマートフォンが震えた。

夫からだった。

『今日のこと、みんなに話した』

「……」

私は。

身体を起こした。

続けて。

メッセージ。

『それで、子どもらから提案がある』

「提案?」

少し。

嫌な緊張。

でも。

その次の文章を見て。

私は。

息を止めた。

『今度、みんなで会ってみたいって』

「……え」

何度も。

読み返す。

みんなで。

ということは。

星も。

これまで。

一人ずつ会ってきた子どもたちも。

そして。

一番小さい子も。

五人。

全員。

「……みんな」

涙が。

じわっと。

滲んだ。

さらに。

『一番下は「みづきとゲームする」って言っとるだけやけど』

思わず。

笑ってしまう。

「うん」

それでいい。

ママに会う。

じゃなくてもいい。

私に。

会おうとしてくれている。

私は。

震える指で。

返事を打った。

『会いたい』

少し考えて。

もう一度。

『みんなに会いたい』

送信。

すると。

しばらくして。

夫から。

『分かった』

そして。

『今度の休み、家じゃない場所で会おう』

私は。

その文字を。

胸に抱くように。

スマートフォンを。

ぎゅっと握った。

「……五人に」

また。

会える。

私の。

子どもたち。

全員に。

◇◇◇

翌日。

陽向に。

その話をした。

「五人全員!?」

予想通り。

大きな声。

「うん」

「一気に?」

「うん」

「マジか……」

陽向が。

ソファに座りながら。

少し。

目を丸くしている。

「美月」

「何?」

「大丈夫?」

私は。

考える。

怖い。

緊張する。

嬉しい。

泣きそう。

全部。

ある。

だから。

「大丈夫じゃない」

と言った。

陽向が。

少し笑った。

「うん」

「でも」

私は。

胸に手を置く。

「すごく楽しみ」

「そっか」

「うん」

「全員が」

「ママって呼んでくれるわけじゃないし」

「うん」

「一番小さい子は」

少し笑う。

「まだ美月だし」

「ゲーム友達みたいな感じだし」

陽向が。

吹き出す。

「いいじゃん」

「うん」

「でもね」

「何?」

私は。

少し。

遠くを見る。

「前は」

「全員に」

「元の関係へ戻ってほしいって」

「思ってた」

「……」

「私がママだって」

「分かって」

「抱きついて」

「前みたいに」

「戻ってほしいって」

「うん」

「でも」

私は。

首を振る。

「戻るんじゃないんだね」

陽向が。

静かに。

私を見る。

「みんな」

「私がいない間にも」

「生きてた」

「……うん」

「大きくなって」

「考え方も変わって」

「私のことを」

「忘れた部分もある」

「うん」

「だから」

私は。

少し笑った。

「前の続きじゃなくて」

「今から」

「新しく」

「親子になっていけばいい」

陽向が。

しばらく。

何も言わなかった。

そして。

「美月」

「何?」

「なんか」

少し。

目を細める。

「すげえな」

「また?」

「うん」

「何が?」

「最初は」

「失ったもの」

「取り戻そうとしてたじゃん」

「……うん」

「でも今は」

陽向が。

私の手を。

握る。

「新しく作ろうとしてる」

胸が。

温かくなった。

「……そうかも」

「うん」

「いいと思う」

そして。

少し。

にやっとする。

「で?」

「何?」

「俺」

「?」

「いつ子ども全員に」

「美月の彼氏ですって」

「挨拶するの?」

「まだ早い!」

「えー!」

「星だけでも」

「情報量多すぎるって」

「言ってたでしょ!」

「でも俺」

「一応」

胸を張る。

「星ちゃんから」

「よろしくお願いしますって」

「言われてるから」

「それを免罪符みたいに使わないの」

「あははっ!」

私は。

笑いながら。

陽向の肩を。

軽く叩いた。

でも。

心のどこかで。

思った。

いつか。

そんな日も。

来るのかな。

子どもたち全員に。

陽向を。

紹介する日。

その未来を。

想像しても。

もう。

怖くなかった。

◇◇◇

約束の日。

待ち合わせ場所は。

人目を避けられる。

貸し切りの。

小さなレンタルスペースだった。

テーブル。

ソファ。

テレビ。

ゲーム機まである。

一番小さい子が。

ゲームをしたいと言っていたから。

夫が。

ここを選んだらしい。

私は。

一人。

先に。

部屋に入っていた。

「……」

時計を見る。

まだ。

十分前。

なのに。

心臓は。

もう。

うるさい。

五人。

全員。

一緒。

前の人生では。

当たり前だった。

『うるさい!』

『順番!』

『走らない!』

『ご飯できたよ!』

毎日。

何度も。

名前を呼んで。

何度も。

注意して。

笑って。

怒って。

疲れて。

でも。

今なら。

その騒がしさが。

どれほど。

愛しいものだったのか。

分かる。

コンコン。

ノック。

身体が。

固まった。

「……はい」

扉が。

開く。

最初に。

星。

私を見た瞬間。

「ママ!」

笑顔。

「星」

その後ろ。

長男。

そして。

これまで。

一人ずつ。

会ってきた子どもたち。

最後。

夫の手を。

軽く掴みながら。

一番小さい子。

「……みづき!」

その声に。

私は。

笑った。

「うん」

「美月だよ」

「ゲームある?」

第一声。

それ?

「あるよ」

「やった!」

一番小さい子が。

私の横を。

走り抜けそうになる。

反射的に。

「走らない!」

声が。

出た。

しん。

全員が。

私を見る。

「……」

私も。

固まる。

一番小さい子だけ。

不思議そうに。

私を見る。

「なんで?」

「転ぶから」

「転ばん」

「転んでからじゃ遅いの」

「……」

星が。

口元を。

押さえた。

長男も。

少し。

笑っている。

そして。

夫が。

小さく。

「……これや」

と。

呟いた。

「何?」

私が聞く。

夫が。

苦笑する。

「家の中」

「昔」

「ずっとこんなんやった」

「……」

一瞬。

胸が。

詰まった。

私も。

笑った。

「そうだったね」

◇◇◇

最初は。

少し。

ぎこちなかった。

星は。

普通に。

私の隣に座る。

長男も。

以前より。

自然に話してくれる。

抱っこで。

私を思い出してくれた子は。

近くまで来て。

何度も。

こちらを見る。

でも。

怒りを。

ぶつけてくれた子は。

少し離れた席。

まだ。

私を。

ママとは呼ばない。

そして。

一番小さい子は。

ほぼ。

ゲームに夢中。

五人。

全員。

違う。

でも。

それでいい。

「ママ」

星が。

袋を。

テーブルに置く。

「これ」

「何?」

「みんなで」

少し。

照れながら。

「持ってきた」

開ける。

中には。

一冊の。

アルバム。

「……」

手が。

止まった。

表紙。

『ママへ』

と。

書かれている。

「これ……」

星が。

少し笑う。

「ママがいなくなってからの」

「私たち」

胸が。

大きく鳴った。

「え?」

「ママ」

「見れてないでしょ?」

「……」

「だから」

長男が。

少し。

気恥ずかしそうに。

続ける。

「見せたろって」

私は。

ゆっくり。

アルバムを開いた。

学校。

行事。

誕生日。

遊びに行った日。

家で。

何気なく撮った写真。

一枚。

また。

一枚。

私の知らない。

子どもたちの時間。

「……大きくなった」

涙が。

ぽろっと。

落ちる。

星が。

笑う。

「そりゃね」

「でも」

ページをめくる。

「これ」

「そのとき?」

「ああ」

「これ」

「髪短くしたの?」

「うん」

「知らなかった」

当たり前。

私は。

いなかった。

その言葉が。

胸に。

刺さる。

でも。

次の瞬間。

長男が。

言った。

「だから」

「今」

「見せとる」

私は。

顔を上げた。

「……」

「知らんかった分」

少し。

目を逸らす。

「今から」

「知ればいいやん」

涙が。

また。

落ちた。

「うん」

私は。

何度も。

頷いた。

「知りたい」

「全部」

「教えて」

◇◇◇

「これ!」

抱っこで。

私を思い出してくれた子が。

一枚の写真を。

指差す。

「運動会」

「え?」

「一位になった」

「本当に!?」

思わず。

声が。

大きくなる。

「すごい!」

「うん」

嬉しそう。

「めちゃくちゃ速かった?」

「まあ」

「何その顔」

「余裕」

「嘘つけ」

夫が。

すぐに言う。

「前の日」

「緊張して寝れんかったやろ」

「パパ言わんといて!」

私は。

笑った。

「そうなの?」

「違う!」

「じゃあ」

私は。

少し。

意地悪く。

笑う。

「顔赤いのは?」

「……」

全員が。

笑う。

その笑い声。

一瞬。

昔の家に。

いるようだった。

◇◇◇

でも。

次のページ。

怒りを。

ぶつけてくれた子が。

急に。

「それ」

と。

言った。

私は。

指を止める。

写真。

表彰状を。

持っている。

「これ?」

「……うん」

「何の?」

少し。

沈黙。

「作文」

「作文?」

星が。

横から。

少し。

困ったような顔をする。

その子は。

何も。

言わない。

私は。

写真を見る。

表彰状。

そして。

手に持っている。

作文用紙。

タイトル。

小さく。

見える。

『お母さんへ』

胸が。

止まった。

「……」

その子が。

顔を逸らす。

「見んでいい」

「……うん」

私は。

すぐに。

アルバムを閉じようとする。

「え?」

子どもが。

驚いた顔。

「いいの?」

「うん」

「読みたくないん?」

「読みたい」

正直に。

答える。

「すごく」

「……」

「でも」

私は。

その子を見る。

「あなたが」

「まだ見せたくないなら」

「読まない」

「……」

しばらく。

その子は。

黙っていた。

「ほんま?」

「うん」

「勝手に」

「あとで見ん?」

「見ない」

「……」

「約束する」

その子が。

私を。

じっと見る。

そして。

少しして。

手を。

伸ばした。

「……これ」

バッグから。

折り畳んだ。

紙。

「え?」

「作文」

私は。

息を止めた。

「持ってきたの?」

「星が」

「持っていこって」

「星」

見ると。

星が。

少し。

気まずそうな顔。

「ごめん」

でも。

その子は。

首を振った。

「いい」

そして。

私を見る。

「……読んでも」

一度。

唇を噛む。

「いい」

手が。

震えた。

「本当に?」

「うん」

私は。

両手で。

受け取った。

◇◇◇

『お母さんへ』

最初の。

一行。

それだけで。

文字が。

滲んだ。

でも。

読む。

『ぼくのお母さんは、もういません。』

胸が。

ぎゅっと。

締めつけられる。

『事故で死にました。』

『みんなは、お母さんは空から見ていると言います。』

『でも、ぼくは空を見ても、お母さんがどこにいるか分かりません。』

涙が。

一滴。

紙に。

落ちそうになる。

慌てて。

拭う。

『学校で嫌なことがあったとき、言いたいと思いました。』

『できるようになったことがあったときも、見せたいと思いました。』

『でも、言えません。』

『だから、ぼくはお母さんが嫌いです。』

息が。

止まる。

あの日。

言われた。

嫌い。

大嫌い。

『勝手に死んだからです。』

『でも、本当は、会いたいです。』

もう。

涙を。

止められなかった。

『一回でいいから、もう一回会って、怒りたいです。』

『なんで死んだんって言いたいです。』

『それから』

字が。

少し。

乱れている。

『本当は、がんばったねって言ってほしいです。』

「……っ」

声が。

漏れた。

私は。

口を押さえる。

その子が。

俯いている。

「……ねえ」

私は。

涙を拭う。

「言ってもいい?」

「何」

「頑張ったね」

その子の。

肩が。

揺れた。

「……」

「ママが」

「見てない間も」

「いっぱい」

声が。

震える。

「頑張ったんだね」

顔を。

上げない。

でも。

拳が。

ぎゅっと。

握られている。

「作文も」

「学校も」

「寂しいのも」

「全部」

私は。

笑った。

「よく頑張ったね」

「……」

その子の目から。

涙が。

落ちた。

そして。

小さく。

「……遅い」

「うん」

「遅すぎ」

「うん」

「今さら」

「うん」

私は。

全部。

受け止める。

しばらくして。

小さな声。

「……でも」

「うん」

「聞きたかった」

胸が。

いっぱいになる。

「何回でも」

私は。

言った。

「言うよ」

「……」

「頑張ったね」

「……」

「本当に」

「よく頑張った」

その子は。

泣きながら。

今度は。

私から。

顔を逸らさなかった。

◇◇◇

「みづき!」

その空気を。

全部。

吹き飛ばしたのは。

一番小さい子だった。

「ゲーム!」

私は。

思わず。

笑った。

「今?」

「いま!」

「ちょっと待って」

「やだ!」

「順番!」

「いま!」

「もう」

私が。

立ち上がると。

星が。

笑う。

「ママ」

「何?」

「行ってあげたら?」

「でも」

「作文」

その子を見る。

すると。

本人が。

涙を拭いながら。

「行けば」

「……いいの?」

「うん」

そして。

ほんの少し。

口元を。

緩める。

「うるさいし」

「聞こえたよ」

一番小さい子が。

ゲーム機を。

持ってくる。

「みづき、ここ!」

「はいはい」

私は。

ソファへ。

移動する。

「何のゲーム?」

説明される。

でも。

全然。

分からない。

「待って」

「それどれ?」

「これ!」

「何で落ちたの!?」

「みづきへた!」

「初めてだから!」

「へた!」

「もう一回!」

「よわ!」

「うるさい!」

私が。

本気で。

ゲームをする。

後ろから。

笑い声。

星。

長男。

他の子どもたち。

夫まで。

笑っている。

「ママ」

星が。

言う。

「何?」

ゲームから。

目を離さずに。

答える。

「楽しそう」

「負けてるんだけど!」

「それでも」

私は。

一瞬。

手を止めた。

そして。

振り返る。

五人。

全員。

ここにいる。

私を見る。

笑っている子。

少し。

照れている子。

まだ。

完全には。

受け入れきれていない子。

そして。

私を。

美月と呼ぶ子。

全員。

違う距離。

それでも。

同じ場所。

胸が。

いっぱいになった。

「……うん」

私は。

笑った。

「楽しい」

本当に。

◇◇◇

少しして。

一番小さい子が。

ゲームに負けて。

「やだ!」

と。

コントローラーを。

投げそうになった。

「投げない!」

反射的に。

私は。

その手を。

止める。

「……」

一番小さい子が。

私を見る。

「だって!」

「悔しいのは分かる」

「でも」

「物に当たらない」

「……」

「もう一回やるなら」

「気持ち落ち着けてから」

「やる」

「……」

口を。

尖らせる。

「みづき」

「何?」

「こわい」

「え?」

「怒ると」

「こわい」

周りから。

笑い声。

「ちょっと!」

「いや」

長男が。

笑う。

「それもママ」

胸が。

止まった。

一番小さい子が。

長男を見る。

「これが?」

「うん」

星も。

笑う。

「ママ、怒るとこんな感じ」

「……」

一番小さい子が。

私を見る。

「ママ?」

私は。

動けなかった。

たった。

二文字。

でも。

それまで。

何度。

待っただろう。

「……」

一番小さい子が。

首を傾げる。

「みづきが」

「ママ?」

「……うん」

声が。

震える。

「そうだよ」

「ふーん」

あまりにも。

軽い。

そして。

次の瞬間。

「じゃあママ」

「……!」

「もう一回ゲーム!」

全員が。

固まった。

「……え?」

私だけ。

声が。

裏返る。

「ママ」

「今」

「ママって」

「言った?」

「うん」

「何で!?」

「だって」

一番小さい子が。

不思議そうな顔。

「みんな言っとる」

「……」

「それに」

私を。

指差す。

「ママなんやろ?」

涙が。

一気に。

溢れた。

「……うん」

「じゃあ」

コントローラーを。

差し出す。

「ママ」

「ゲーム」

「……」

私は。

泣きながら。

笑った。

「うん」

コントローラーを。

受け取る。

「やろう」

「なんで泣いとるん?」

「嬉しいから」

「また?」

「またです」

星が。

隣で。

泣いていた。

夫も。

顔を。

背けている。

長男が。

笑いながら。

「ママ」

と。

呼ぶ。

それに。

重なるように。

「ママ」

「ママ」

一人。

また一人。

そして。

少し。

離れていた子が。

最後。

小さく。

「……ママ」

息が。

止まった。

あの日。

嫌い。

大嫌い。

そう。

言った子。

私は。

何も言わず。

その子を見る。

「……何」

照れたように。

顔を逸らす。

「呼んだだけ」

「……うん」

私は。

泣きながら。

笑う。

「ありがとう」

「別に」

でも。

もう。

十分だった。

五人。

全員。

同じ声じゃない。

同じ気持ちでもない。

それでも。

今。

私を。

呼んでくれた。

「……ママ」

私は。

胸に。

手を当てた。

もう。

この言葉を。

失ったとは。

思わなかった。

◇◇◇

帰る時間。

子どもたちが。

順番に。

部屋を出ていく。

「またね」

「うん」

「次いつ?」

「予定合わせようね」

「ゲーム絶対!」

「分かったって」

星が。

最後。

私のところへ。

来る。

「ママ」

「何?」

ぎゅっと。

抱きしめられた。

私も。

抱きしめ返す。

「今日」

星が。

耳元で。

小さく言う。

「みんな」

「ちょっと戻ったね」

私は。

首を振った。

「違うよ」

「え?」

「戻ったんじゃない」

私は。

五人が。

歩いていく。

後ろ姿を見る。

「また」

「始まったんだと思う」

「……」

「今の私と」

「今のみんなで」

星が。

少し。

笑った。

「そっか」

「うん」

「じゃあ」

「?」

「これからだね」

胸が。

温かくなる。

「うん」

私は。

笑った。

「これから」

◇◇◇

その夜。

陽向に。

電話をした。

『もしもし』

「陽向」

『何?』

私は。

一度。

息を吸う。

でも。

笑いが。

止まらない。

「全員に」

『……うん』

涙が。

また。

少し。

出る。

「ママって」

『……』

「呼んでもらえた」

電話の向こう。

しばらく。

何も聞こえなかった。

「陽向?」

『ごめん』

鼻を。

すする音。

「……泣いてる?」

『泣いてない』

「泣いてるじゃん」

『美月が』

声が。

震える。

『ずっと会いたいって』

『言ってたから』

「……うん」

『よかったな』

「うん」

「本当に」

私は。

目を閉じる。

「よかった」

『美月』

「何?」

『今』

少し。

笑う声。

『幸せ?』

私は。

迷わなかった。

「うん」

でも。

それだけじゃ。

足りない。

「すごく」

「幸せ」

子どもたちに。

また会えた。

母親として。

もう一度。

始められた。

そして。

その幸せを。

一緒に喜んでくれる。

大切な人がいる。

「陽向」

『ん?』

「今度」

「うん」

私は。

少し。

緊張しながら。

でも。

笑って。

言った。

「子どもたちに」

『……』

「会ってほしい」

電話の向こう。

陽向が。

完全に。

黙った。

「陽向?」

『……五人全員?』

「うん」

『俺』

「うん」

『彼氏として?』

「うん」

長い。

沈黙。

そして。

『無理』

「ええ!?」

『緊張する!』

思わず。

笑った。

「トップアイドルでしょ!」

『関係ない!』

「何万人の前でライブできるのに?」

『美月の子ども五人の前のほうが無理!』

「なんで!」

『だって』

陽向が。

本気で。

困ったように言う。

『俺』

『審査される側じゃん!』

私は。

とうとう。

声を上げて。

笑った。

でも。

きっと。

次の一歩は。

そこ。

母親としての私。

恋人としての私。

今まで。

別々だった。

二つの人生を。

今度こそ。

同じ場所で。

繋ぐ。

そのために。

私は。

世界で一番大切な。

五人の子どもたちへ。

世界で一番大好きな人を。

紹介することにした。