目覚めたら、最推しの腕の中でした~1度終わった私の人生、もう一度恋をしました。~

翌日。

朝から。

私は。

何度も。

スマートフォンを見ていた。

夫から。

『子どもらに聞いてみる』

そう言われたから。

今日は。

きっと。

何か。

連絡が来る。

でも。

昼になっても。

来ない。

午後になっても。

来ない。

「……」

スマートフォンを置く。

五秒後。

また。

手に取る。

「来てない……」

分かってる。

子どもたちにとっては。

簡単な話じゃない。

亡くなったはずの母親が。

別の女性の身体で。

生きている。

そんなこと。

大人だって。

すぐには。

受け止められない。

それを。

子どもに。

どう説明するのか。

夫だって。

悩む。

それでも。

胸が。

落ち着かない。

もし。

会いたくない。

って。

言われたら?

怖い。

知らない女の人。

って。

言われたら?

それでも。

仕方ない。

そう。

思おうとして。

でも。

やっぱり。

苦しい。

「……会いたい」

私は。

小さく呟いた。

星だけじゃない。

みんなに。

会いたい。

◇◇◇

夕方。

インターホンが鳴った。

「はい」

ドアを開けると。

陽向。

「よ」

「……お疲れ」

「その顔」

「何?」

「今日ずっと待ってる顔」

図星。

私は。

少し。

口を尖らせた。

「分かる?」

「分かる」

陽向が。

靴を脱ぐ。

「連絡まだ?」

「うん」

「そっか」

リビングへ。

陽向は。

何も言わず。

私の隣に座った。

「仕事は?」

「終わった」

「疲れてない?」

「疲れてる」

「……珍しい」

「美月に」

少し笑う。

「疲れたって言えって」

「言われてるから」

胸が。

少し。

温かくなる。

「そっか」

「うん」

そして。

陽向が。

私を見る。

「美月は?」

「……」

少し迷う。

でも。

言う。

「不安」

「うん」

「会いたくないって」

「言われたらどうしようって」

「うん」

「でも」

私は。

膝の上で。

手を握る。

「それでも」

「子どもたちが」

「そう思うなら」

「受け止めなきゃって」

陽向が。

少し。

眉を下げる。

「また」

「何?」

「受け止めなきゃって」

「……」

「今」

「先に」

「傷つく準備してない?」

私は。

言葉に詰まった。

「……してるかも」

「美月」

「うん」

「まだ」

「何も言われてない」

「……うん」

「会いたいって」

「言ってくれるかもしれないじゃん」

「うん」

「だから」

陽向が。

私の手を取る。

「その返事が来てから」

「泣こう」

私は。

少し笑った。

「泣く前提?」

「どっちにしても」

「美月泣くでしょ」

「……否定できない」

陽向が。

笑う。

その瞬間。

スマートフォンが。

震えた。

二人。

同時に。

見る。

夫。

「……来た」

手が。

震える。

陽向は。

何も言わない。

ただ。

私の手を。

握ったまま。

私は。

メッセージを開いた。

『話した』

その下。

少し。

間を空けて。

『全員いっぺんには無理やと思う』

「……」

胸が。

ぎゅっとなる。

続き。

『でも』

指が。

止まる。

『上の子が、会いたいって言っとる』

「……っ」

涙が。

一気に。

溢れた。

「美月」

「会いたいって」

「うん」

「言ってくれた」

陽向が。

笑う。

「よかったな」

「うん……」

まだ。

続きがある。

『本当にママなら、聞きたいことがあるらしい』

私は。

涙を拭う。

『会わせてほしい』

送る。

少しして。

返信。

『明日でもええ?』

「……明日」

陽向を見る。

「明日会える」

「うん」

「どうしよう」

「どうしたい?」

その聞き方。

私は。

少し笑った。

「会いたい」

「じゃあ」

陽向も。

笑う。

「会おう」

◇◇◇

翌日。

待ち合わせ場所へ。

向かう途中。

私は。

何度も。

鏡を見た。

髪。

変じゃない。

服も。

派手すぎない。

でも。

「……何してるんだろ」

どんな格好をしたって。

この顔は。

高瀬美月じゃない。

それでも。

今日は。

少しでも。

『お母さん』らしく。

見えたかった。

自分でも。

変だと思う。

「……大丈夫」

言ってから。

すぐ。

首を振る。

「緊張してる」

今日も。

ちゃんと。

言い直せた。

◇◇◇

指定された場所。

夫が。

先に来ていた。

その隣。

少し。

離れて。

一人の子。

「……」

息が。

止まった。

大きくなった。

それが。

最初に。

浮かんだ。

私が。

最後に見たときより。

少し。

背が伸びている。

顔つきも。

変わっている。

でも。

私には。

分かる。

私の子。

「……」

足が。

動かない。

夫が。

こちらに気づく。

そして。

隣の子へ。

何か。

小さく言った。

その子が。

ゆっくり。

私を見る。

警戒。

戸惑い。

その目。

胸が。

痛む。

でも。

当然。

私は。

一歩。

近づいた。

「……こんにちは」

何て。

おかしい。

自分の子に。

こんにちは。

それでも。

今は。

それしか。

言えない。

「……こんにちは」

返事。

してくれた。

それだけで。

泣きそうになる。

「座ろか」

夫が。

言う。

三人で。

静かな席へ。

◇◇◇

「パパから」

その子が。

先に。

口を開いた。

「聞いた」

「……うん」

「この人が」

私を見る。

「ママかもしれんって」

「うん」

「でも」

「……」

「顔」

まっすぐ。

言われる。

「全然違う」

「うん」

「声も」

「うん」

「ママじゃない」

胸が。

痛い。

でも。

私は。

頷いた。

「そう見えるよね」

「……」

「私でも」

自分の手を見る。

「最初」

「鏡見て」

「誰って思ったから」

その子が。

少し。

眉を寄せる。

「じゃあ」

「うん」

「どうやって」

「ママだって」

「分かるの?」

質問。

来ると思っていた。

私は。

一度。

息を吸う。

「何でも」

「聞いていいよ」

「……」

「分かることなら」

「答える」

少し。

考えて。

その子が。

聞いた。

「僕が」

言葉が。

止まる。

「初めて」

「学校行きたくないって」

「言ったとき」

胸が。

揺れた。

覚えてる。

もちろん。

「ママ」

「何て言った?」

私は。

その日のことを。

思い出す。

朝。

ランドセル。

玄関。

泣きそうな顔。

「……無理に」

ゆっくり。

答える。

「行けとは」

「言わなかった」

その子の目が。

少し動く。

「まず」

「何が嫌なのって」

「聞いた」

「……」

「それで」

私は。

少し笑う。

「理由」

「すぐには」

「言わなかったよね」

「……」

「だから」

「今日は」

「玄関まで行って」

「それでも無理だったら」

「戻ってきてもいいよって」

「言った」

その子が。

黙る。

夫が。

私を見る。

「それ」

夫も。

知らないらしい。

「でも」

その子が。

まだ。

納得していない顔。

「そのあと」

「……うん」

「僕」

「何て言った?」

私は。

すぐに。

答えた。

「『ママも一緒なら行く』」

「……」

「だから」

涙が。

滲む。

「途中まで」

「一緒に歩いた」

その子の目が。

大きくなる。

「学校の前までじゃないよ」

私は。

少し笑った。

「見られたら恥ずかしいって」

「途中で」

「帰ってって言われたから」

「……」

その子の。

唇が。

少し震えた。

「それ」

「誰にも」

「言ってない」

「うん」

「パパも」

知らない。

横で。

夫が。

静かに。

首を振る。

「……何で」

その子が。

私を見る。

「知ってるの?」

もう。

答えは。

一つ。

「ママだから」

声が。

震える。

「……」

「信じられないと思う」

私は。

涙を拭う。

「でも」

「私」

「ずっと」

「会いたかった」

「……」

「ごめん」

また。

言いかける。

違う。

「寂しかったよね」

その子の。

表情が。

一瞬で。

崩れた。

「……」

下を向く。

肩が。

震えている。

私は。

手を伸ばしたくなる。

でも。

止める。

まだ。

勝手に。

触っちゃいけない。

「……ママ」

小さな。

声。

息が。

止まる。

「何で」

その子が。

顔を上げた。

泣いている。

「何で」

「帰ってこなかったの」

胸が。

引き裂かれる。

「帰りたかった」

「じゃあ!」

声が。

大きくなる。

「帰ってくればよかったやん!」

「うん」

「ずっと」

涙が。

ぼろぼろ。

落ちる。

「ママ死んだって」

「言われて」

「……」

「もう」

「会えんって」

「うん」

「僕」

「……」

「いっぱい」

その先が。

言えない。

私は。

もう。

我慢できなかった。

でも。

それでも。

聞く。

「抱きしめてもいい?」

その子が。

一瞬。

止まる。

そして。

泣きながら。

頷いた。

次の瞬間。

私は。

抱きしめた。

「……っ」

小さくない。

前より。

大きくなった身体。

でも。

私には。

分かる。

何度も。

抱きしめてきた。

私の子。

「ごめ……」

また。

謝りそうになる。

違う。

私は。

背中を。

何度も撫でた。

「会いたかった」

「……」

「ずっと」

「会いたかったよ」

「……ママ」

「うん」

「ほんまに?」

「うん」

「ほんまにママ?」

「うん」

私は。

泣きながら。

笑う。

「ママだよ」

その子の手が。

私の服を。

ぎゅっと。

掴んだ。

「……ママ」

今度は。

はっきり。

呼ばれた。

胸が。

いっぱいになった。

「うん」

「ここにいるよ」

◇◇◇

しばらく。

誰も。

話さなかった。

夫も。

少し離れたところで。

顔を。

背けていた。

きっと。

泣いている。

その子が。

少し。

落ち着いてから。

私から。

身体を離した。

でも。

手は。

私の服を。

まだ。

掴んでいる。

「……変な感じ」

「うん」

「ママの顔じゃない」

「うん」

「でも」

私を見る。

「ママっぽい」

思わず。

笑った。

「星も」

「同じこと言ってた」

「姉ちゃんも?」

「うん」

「もう」

「ママって」

「呼んでくれてる」

その子が。

少し。

安心したような顔をした。

「そっか」

「うん」

「じゃあ」

少し。

迷う。

「僕も」

「……」

「ママって」

「呼んでいい?」

涙が。

また。

溢れた。

「当たり前でしょ」

「……」

「何回でも」

笑う。

「呼んで」

「……ママ」

「うん」

「ママ」

「うん」

何回でも。

返事をした。

そのたび。

失ったと思っていた時間が。

少しずつ。

戻ってくるようだった。

◇◇◇

帰り際。

その子が。

少し。

言いにくそうに。

言った。

「他の子ら」

「うん」

「まだ」

「怖いって」

胸が。

少し。

痛む。

「そっか」

「でも」

「……」

「僕が」

少し。

恥ずかしそうに。

言う。

「話す」

「え?」

「会ってみたら」

「分かるって」

「……」

涙が。

また。

出そうになる。

「無理しなくていいよ」

私は。

すぐに言った。

「説得しなくていい」

「……」

「会いたいって」

「思ったときに」

「会ってくれたらいいから」

その子が。

私を見る。

そして。

少し笑った。

「ママ」

「何?」

「前より」

「何?」

「ちょっと」

考える。

「優しくなった?」

「え?」

夫が。

横で。

少しだけ。

笑った。

「そこは」

「前からやろ」

「えー」

「何その反応!」

久しぶりに。

三人で。

少し。

笑った。

◇◇◇

夜。

陽向が。

私の部屋に来た。

玄関を開けた瞬間。

私の顔を見て。

「会えた?」

私は。

泣きながら。

笑った。

「うん」

「ママって?」

「……呼んでくれた」

陽向が。

大きく。

息を吐いた。

そして。

笑う。

「よかったな」

「うん」

私は。

その胸へ。

抱きついた。

「今日」

「うん」

「いっぱい」

「ママって呼ばれた」

「うん」

「何回聞いても」

「泣きそうになった」

「うん」

「それでね」

顔を上げる。

「他の子たちにも」

「会ってみたら分かるって」

「話してくれるって」

「……そっか」

「でも」

私は。

首を振る。

「急がなくていいって」

「言えた」

陽向が。

少し。

目を細める。

「美月」

「何?」

「それ」

「すごいじゃん」

「何が?」

「前なら」

「みんなに会わなきゃ」

「ちゃんと分かってもらわなきゃって」

「一人で」

「焦ってたと思う」

「……そうかも」

「でも今」

「子どもたちの気持ちも」

「待ててる」

私は。

少し。

笑った。

「成長した?」

「した」

「何点?」

「二百点」

「また増えてる」

陽向が。

笑う。

◇◇◇

その夜。

夫から。

一通。

メッセージが来た。

『今日会った子が、下の子らに話してる』

続けて。

『一人、会ってみたいって言い出した』

「……」

胸が。

大きく鳴る。

また。

会える。

もう一人。

大切な。

私の子に。

私は。

スマートフォンを。

胸に抱いた。

一人ずつ。

少しずつ。

私の。

一度目の人生が。

今の私へ。

戻ってきている。

いや。

戻るんじゃない。

繋がっていく。

星。

今日会えた子。

そして。

まだ。

会えていない子どもたち。

焦らなくていい。

一人ずつ。

それぞれの気持ちで。

私を。

見つけてもらえたらいい。

そのたびに。

私は。

何度でも。

伝えよう。

顔が違っても。

声が違っても。

――ママは。

――ずっと、あなたたちが大好きだよ。