夫から。
『子どもたちに話す前に、もう一度会いたい』
そう連絡が来てから。
二日後。
私は。
もう一度。
夫と向かい合っていた。
今度は。
星はいない。
二人だけ。
正確には。
一ノ瀬紗良の姿をした私と。
かつて。
高瀬美月の夫だった人。
静かな。
個室。
テーブルを挟んで。
夫は。
ずっと。
私を見ていた。
「……」
「……」
何を。
話せばいいんだろう。
前は。
子どもたちのこと。
今日あったこと。
家のこと。
そんな。
何でもない話を。
していた人。
なのに今は。
何から話せばいいのか。
分からない。
先に。
口を開いたのは。
夫だった。
「手紙」
「……うん」
「見た」
「そっか」
「青い封筒」
「うん」
「本当に」
夫が。
小さく息を吐く。
「まだあった」
私は。
少し笑った。
「捨てられなかったから」
「俺」
「捨てろって言ったよな」
「言った」
「あんな恥ずかしいやつ」
「だから取っといた」
「何でや」
その言い方。
懐かしい。
一瞬だけ。
昔に。
戻ったような気がした。
夫も。
同じことを思ったのか。
私を見て。
少しだけ。
目を細めた。
「……美月やな」
胸が。
きゅっとなる。
「うん」
「ほんまに」
何度も。
確かめるように。
夫は言った。
「美月なんやな」
「……うん」
夫が。
顔を覆った。
「意味分からん」
「私も」
「何で」
「うん」
「お前が」
顔を上げる。
「一ノ瀬紗良なんや」
「……分からない」
「ほんまに?」
「うん」
「嘘とか」
「ついてない」
「……」
「説明できるなら」
私は。
苦笑した。
「私が一番」
「説明してほしいよ」
夫は。
しばらく。
何も言わなかった。
◇◇◇
「美月」
「うん」
「一個」
夫が。
言いにくそうに。
視線を落とす。
「聞いていい?」
「うん」
「……帰ってくる気」
胸が。
止まりそうになった。
夫は。
続けた。
「ある?」
「……」
分かっていた。
いつか。
聞かれると。
でも。
実際に。
目の前で言われると。
思っていたより。
苦しかった。
「子どもらもおる」
「うん」
「星は」
少し。
笑う。
「もうお前がママやって」
「信じとる」
「……うん」
「他の子らも」
「もしかしたら」
「……」
夫が。
私を見る。
「家族」
言葉が。
止まる。
「また」
「戻れるんかなって」
その声に。
期待だけじゃない。
戸惑いも。
怖さも。
あった。
きっと。
この人自身も。
分からない。
亡くなった妻が。
別人の姿で戻ってきた。
だったら。
夫婦は。
元に戻るのか。
私は。
膝の上で。
手を握った。
逃げちゃいけない。
曖昧にしたら。
もっと。
傷つける。
「……戻れない」
夫の目が。
揺れた。
私は。
続けた。
「ごめん」
その言葉を。
口にして。
少し止まる。
また。
何でも。
謝ろうとしている。
私は。
首を振った。
「違う」
「……?」
「謝ることじゃないね」
一度。
息を吸う。
「私は」
「あなたの妻だった」
「うん」
「それは」
「今でも」
「なくしたくない」
夫の顔が。
少し。
歪む。
「あなたと結婚して」
「子どもたちが生まれて」
「楽しかったことも」
「いっぱいあった」
「……」
「喧嘩もした」
「いっぱい」
「嫌だったことも」
「寂しかったことも」
「……」
「でも」
私は。
夫を見る。
「全部」
「私の人生だった」
「……うん」
「だから」
「あなたとの時間を」
「間違いだったとは」
「思ってない」
夫が。
ゆっくり。
下を向いた。
「でも」
私は。
胸に手を当てる。
「もう」
「あなたの妻には」
「戻れない」
「……何で?」
低い声。
責めるというより。
確かめるような。
言葉だった。
私は。
少し迷った。
でも。
言う。
「私」
「今」
夫が。
顔を上げる。
「好きな人がいる」
「……」
静かになった。
夫の表情が。
止まる。
「……そっか」
それだけ。
でも。
声が。
明らかに。
変わった。
「事故のあと?」
「うん」
「その人」
「お前が美月やって」
「知っとる?」
「知ってる」
「……」
「最初から?」
「最初は」
私は。
少し苦笑する。
「信じてもらえなかった」
「そりゃそうやろ」
「うん」
「私もそう思う」
夫が。
少しだけ。
笑った。
でも。
すぐに。
真顔に戻る。
「その人」
「誰」
心臓が。
跳ねる。
まだ。
言わなくても。
いいのかもしれない。
陽向も。
一つずつでいいと。
言ってくれた。
でも。
ここまで。
ちゃんと。
区切りをつけるなら。
隠したくなかった。
「天城陽向」
「……」
夫が。
固まった。
「……誰?」
「ASTERの」
「いや」
夫が。
手を上げる。
「名前は知っとる」
「……」
「え?」
「お前」
「好きやったやつやん」
「……はい」
夫が。
数秒。
何も言わない。
そして。
ゆっくり。
額を押さえた。
「待って」
「うん」
「死んだと思っとった嫁が」
「人気女優の身体で戻ってきて」
「……うん」
「その嫁が」
「昔から好きやったトップアイドルと」
「付き合っとる?」
「……はい」
「意味分からん」
「私も」
「お前」
夫が。
思わず。
笑ってしまった。
「人生二周目」
「強すぎやろ」
「そういう言い方やめて」
私も。
少しだけ。
笑った。
ほんの少し。
昔みたいに。
◇◇◇
でも。
夫の笑顔は。
すぐに消えた。
「……好きなん」
「うん」
「その人のこと」
私は。
迷わなかった。
「好き」
夫が。
目を伏せる。
「そっか」
「……うん」
「俺より?」
その質問に。
胸が。
痛んだ。
比べるもの。
なのかな。
私は。
しばらく。
考えた。
「比べられない」
「……」
「あなたを好きだったのは」
「嘘じゃない」
「……うん」
「でも」
私は。
ゆっくり。
言葉を選ぶ。
「あなたを好きだった私と」
「今」
「陽向を好きな私は」
「違う時間を生きてる」
夫が。
黙って。
聞いている。
「昔に戻って」
「どっちが上だったとか」
「そういうことじゃない」
「……」
「あなたは」
「私の一度目の人生で」
「家族だった」
胸が。
少し。
締めつけられる。
「陽向は」
「今の私が」
「これから一緒に生きたい人」
「……」
夫は。
しばらく。
黙っていた。
そして。
小さく。
「きついな」
と。
言った。
私は。
何も。
言えなかった。
当然。
傷つく。
亡くなったと。
思っていた妻が。
戻ってきて。
その妻から。
別の人を。
好きだと言われる。
「でも」
夫が。
テーブルを見つめる。
「俺が」
「お前に」
「帰ってこいって言うのも」
「違うんかもな」
「……」
「だって」
少し。
苦笑する。
「帰ってきたところで」
「一ノ瀬紗良として」
「暮らすんやろ?」
「……うん」
「仕事もある」
「うん」
「それに」
夫が。
私を見る。
「お前」
「前と」
「ちょっと変わった」
胸が。
鳴る。
「変わった?」
「うん」
「前なら」
「こんなこと」
「言えんかったやろ」
「……」
「俺がどう思うか」
「子どもらがどう思うか」
「そっちばっか考えて」
「……」
「自分が」
「誰を好きとか」
「どうしたいとか」
夫が。
少し笑う。
「最後まで」
「言わんかったと思う」
私は。
何も。
言えなかった。
この人も。
知っていたんだ。
私が。
自分の気持ちを。
後回しにしていたこと。
全部ではなくても。
「……そうかも」
私は。
小さく笑った。
「今は」
「言うようにしてる」
「そっか」
「うん」
「……そのほうが」
夫が。
少し。
寂しそうに笑った。
「ええんかもな」
「……」
「俺とおったときに」
「そうできとったら」
一瞬。
声が。
詰まる。
「もうちょい」
「違ったんかな」
胸が。
痛くなった。
これは。
責めるための。
言葉じゃない。
後悔。
私にも。
ある。
「……分からない」
私は。
正直に言った。
「でも」
「私だけじゃない」
夫を見る。
「あなたも」
「言わなかったこと」
「いっぱいあったでしょ」
「……あるな」
「だから」
「どっちか一人が」
「悪かったわけじゃないと思う」
「……」
「合わなかったところも」
「うまく話せなかったところも」
「いっぱいあった」
「うん」
「それでも」
私は。
少し笑う。
「子どもたちが生まれたことは」
「私」
「絶対」
「後悔してない」
夫の目が。
少し赤くなる。
「俺も」
「うん」
「そこだけは」
「絶対」
「同じ」
胸が。
温かくなった。
夫婦には。
戻らない。
でも。
この人と。
完全な他人に。
なるわけでもない。
私たちには。
五人の子どもたちがいる。
それだけは。
変わらない。
◇◇◇
「美月」
「うん」
「子どもらに」
夫が。
ゆっくり。
言う。
「話そうと思う」
心臓が。
大きく鳴った。
「本当に?」
「ただ」
「うん」
「いきなり」
「お母さん生きとったぞ」
「は無理や」
「……それはそう」
「星みたいに」
「信じる子もおれば」
「怖がる子も」
「おるかもしれん」
「うん」
「だから」
夫は。
少し考える。
「一人ずつ」
「話したほうがええと思う」
「……うん」
同じことを。
星も。
言っていた。
「それと」
「何?」
「俺から」
「先に聞いてみる」
「……」
「ママのこと」
「話したいか」
「会いたいか」
胸が。
締めつけられる。
「うん」
「無理やりは」
「せん」
「うん」
「それでいい」
私は。
何度も。
頷いた。
「ありがとう」
「礼言われることじゃない」
「でも」
私は。
涙を拭う。
「子どもたちのこと」
「ずっと」
「見てくれてたから」
夫が。
少し。
眉を寄せる。
「俺の子でもあるやろ」
「うん」
「当たり前や」
「うん」
それでも。
私がいなくなってから。
大変だったはず。
悲しむ暇も。
なかったかもしれない。
「……大変だった?」
聞くと。
夫は。
少しだけ。
笑った。
「めちゃくちゃ」
「……だよね」
「お前」
「ようこんなん」
「毎日やっとったなって」
「今さら?」
「今さら」
私は。
思わず。
笑った。
「遅いわ」
「悪かった」
「ほんとに」
二人で。
笑う。
でも。
涙も。
出た。
もし。
生きていたときに。
こんなふうに。
話せていたら。
違ったことも。
あったのかもしれない。
でも。
今さら。
過去を。
やり直すことはできない。
だから。
これから。
できる形を。
考える。
◇◇◇
夫が。
少しだけ。
真面目な顔になる。
「あと」
「うん」
「その」
「天城……陽向?」
「うん」
「子どもらには」
「どうするん」
「……」
難しい。
私は。
少し。
考えた。
「今すぐ」
「みんなに言うつもりはない」
「そっか」
「まず」
「私がママだってことだけでも」
「大きすぎるから」
「うん」
「陽向のことは」
「そのあと」
「……」
夫が。
少し。
安心したように。
息を吐く。
「でも」
私は。
続ける。
「隠し続けるつもりもない」
夫が。
私を見る。
「ちゃんと」
「いつか」
「私が好きな人だって」
「伝えたい」
「……そっか」
「うん」
「星には?」
「もうバレてる」
「……」
夫が。
額を押さえた。
「星」
「情報量多すぎるやろ」
「本人も言ってた」
また。
少し。
笑った。
「……その人」
夫が。
静かに聞く。
「子どもらのこと」
「知っとるん?」
「うん」
「五人とも?」
「うん」
「……嫌がってない?」
私は。
首を振った。
「むしろ」
「私が子どもたちを忘れる必要ないって」
「言ってくれた」
夫の目が。
少し。
揺れる。
「そうか」
「うん」
「子どもたちは」
「私の一部だからって」
「……」
夫が。
しばらく。
何も言わなかった。
そして。
「なら」
小さく。
言った。
「ええ人なんやろな」
「……うん」
涙が。
少し。
滲んだ。
「すごく」
「そうか」
それ以上。
夫は。
何も聞かなかった。
◇◇◇
帰る前。
夫が。
立ち上がる。
私も。
立つ。
「じゃあ」
「うん」
「子どもらに」
「聞いてみる」
「うん」
「返事」
「連絡する」
「分かった」
一度。
夫が。
背を向ける。
でも。
扉の前で。
止まった。
「美月」
「ん?」
振り返る。
「……生きとって」
少し。
言葉を探す。
「よかった」
胸が。
詰まった。
「……うん」
「最初は」
夫が。
苦笑する。
「こんなんなら」
「元に戻れんかなって」
「思ったけど」
「……」
「でも」
私を見る。
「お前が」
「生きとるだけで」
「よかったんやと思う」
涙が。
落ちた。
「……ありがとう」
「子どもらに」
「また会えるとええな」
「うん」
「じゃ」
「うん」
夫が。
ドアを開ける。
私は。
その背中に。
言った。
「ねえ」
夫が。
振り返る。
「今まで」
「……」
「ありがとう」
「何や急に」
「言いたかったから」
私は。
少し笑う。
「夫婦として」
「うまくいかなかったことも」
「いっぱいあったけど」
「……」
「一緒に」
「子どもたちの親になってくれて」
「ありがとう」
夫の目が。
少し。
赤くなった。
「……俺も」
それだけ。
言って。
今度こそ。
部屋を出ていった。
私は。
追いかけなかった。
もう。
妻として。
その背中を。
追うことはない。
でも。
子どもたちの父親として。
これからも。
繋がっていく。
それでいい。
◇◇◇
夜。
陽向が。
私の部屋へ来た。
「……どうだった?」
玄関を開けた瞬間。
聞かれた。
私は。
少し笑う。
「ちゃんと」
「終わらせてきた」
陽向の目が。
揺れた。
「終わらせた?」
「うん」
リビングへ。
二人で移動する。
「夫婦には」
「戻らないって」
「言った」
「……」
「私」
陽向を見る。
「好きな人がいるって」
陽向の顔が。
一気に。
赤くなる。
「……俺?」
「他に誰がいるの」
「いや」
耳まで。
真っ赤。
「旦那さんに?」
「うん」
「俺の名前?」
「言った」
「……」
陽向が。
ソファに。
崩れ落ちた。
「無理」
「何が?」
「元旦那に」
顔を覆う。
「美月の彼氏として」
「認識された」
私は。
笑ってしまう。
「そこ?」
「そこ大事!」
「ふふっ」
でも。
少しして。
陽向は。
顔を上げた。
「美月」
「何?」
「大丈夫だった?」
「……」
私は。
考える。
寂しさ。
あった。
昔を。
思い出した。
もし。
あのとき。
もっと話せていたら。
そんな後悔も。
少し。
あった。
でも。
「大丈夫」
一度。
止まる。
「……ううん」
言い直す。
「寂しかった」
「うん」
「ちょっと」
「泣きそうだった」
「うん」
「でも」
陽向の隣へ。
座る。
「戻りたいとは」
「思わなかった」
陽向が。
静かに。
私を見る。
「ちゃんと」
私は。
陽向の手を取る。
「過去なんだって」
「思えた」
「……そっか」
「うん」
「私」
少し笑う。
「前の夫との時間を」
「消したくない」
「うん」
「これからも」
「子どもたちのことで」
「繋がると思う」
「うん」
「でも」
私は。
指を絡める。
「恋愛として」
「一緒にいたいのは」
陽向を見る。
「陽向」
その瞬間。
陽向の顔が。
ぐしゃっと。
崩れた。
「……何その顔」
「いや」
「嬉しい」
「泣くの?」
「泣かない」
目。
少し。
潤んでる。
「陽向」
「何?」
「私」
「うん」
「過去を」
「捨てて」
「陽向を選んだんじゃないよ」
「……」
「過去は」
「ちゃんと大事」
「うん」
「でも」
私は。
笑った。
「未来を」
「陽向と生きたい」
陽向が。
何も言えなくなる。
数秒。
そのまま。
私を見て。
そして。
急に。
抱きしめた。
「……美月」
「うん」
「それ」
「ヤバい」
「何が?」
「めちゃくちゃ嬉しい」
私は。
陽向の背中へ。
腕を回す。
「陽向」
「ん?」
「これからも」
「子どもたちのことで」
「前の夫と会うこと」
「あると思う」
「うん」
「嫌だったら」
「ちゃんと言ってね」
陽向が。
少し。
考える。
「嫉妬したら言う」
「うん」
「でも」
私の肩に。
顎を乗せる。
「会うなとは」
「言わない」
「……うん」
「だって」
「?」
「子どもたちの父親だもん」
胸が。
温かくなる。
「ありがとう」
「ただし」
「何?」
陽向が。
少し離れて。
私を見る。
「帰ってきたら」
「俺に会って」
「……」
「何それ」
「彼氏の充電」
「陽向が?」
「俺も」
「美月も」
私は。
笑った。
「じゃあ」
「今日」
「充電する?」
陽向が。
固まった。
「……美月」
「何?」
「最近」
「急に強い」
「嫌?」
「めちゃくちゃ好き」
笑いながら。
唇が。
重なった。
優しく。
短い。
キス。
私は。
もう。
迷わなかった。
前の夫に。
申し訳ないからでも。
紗良に。
申し訳ないからでもなく。
自分の気持ちで。
陽向を。
好きでいる。
◇◇◇
その夜。
夫から。
メッセージが届いた。
『明日、子どもらに聞いてみる』
私は。
画面を。
しばらく見つめた。
いよいよ。
次は。
子どもたち。
星以外の。
大切な。
四人。
会いたい。
怖い。
でも。
もう。
逃げない。
陽向との未来を。
選んだからといって。
母親を。
やめるわけじゃない。
母親だからといって。
自分の恋を。
捨てる必要もない。
私は。
どちらも。
大切にする。
それが。
今の。
高瀬美月だから。
私は。
夫へ。
一言。
返した。
『ありがとう。みんながどうしたいか、ちゃんと聞いてあげて』
送信。
そして。
陽向とのトーク画面を。
開く。
『今日はありがとう』
すぐ。
返事。
『何が?』
私は。
少し笑って。
打った。
『私の過去ごと、大切にしてくれて』
数秒後。
『当たり前』
続けて。
『過去があるから今の美月がいるんでしょ』
胸が。
温かくなる。
私は。
スマートフォンを。
胸に抱いた。
夫だった人との。
時間。
子どもたちとの。
時間。
紗良が。
生きた時間。
陽向と。
これから作る時間。
全部。
一本の道に。
繋がり始めている。
もう。
前の人生へ。
戻るんじゃない。
二つの人生を。
繋いで。
私は。
前へ。
進んでいく。
『子どもたちに話す前に、もう一度会いたい』
そう連絡が来てから。
二日後。
私は。
もう一度。
夫と向かい合っていた。
今度は。
星はいない。
二人だけ。
正確には。
一ノ瀬紗良の姿をした私と。
かつて。
高瀬美月の夫だった人。
静かな。
個室。
テーブルを挟んで。
夫は。
ずっと。
私を見ていた。
「……」
「……」
何を。
話せばいいんだろう。
前は。
子どもたちのこと。
今日あったこと。
家のこと。
そんな。
何でもない話を。
していた人。
なのに今は。
何から話せばいいのか。
分からない。
先に。
口を開いたのは。
夫だった。
「手紙」
「……うん」
「見た」
「そっか」
「青い封筒」
「うん」
「本当に」
夫が。
小さく息を吐く。
「まだあった」
私は。
少し笑った。
「捨てられなかったから」
「俺」
「捨てろって言ったよな」
「言った」
「あんな恥ずかしいやつ」
「だから取っといた」
「何でや」
その言い方。
懐かしい。
一瞬だけ。
昔に。
戻ったような気がした。
夫も。
同じことを思ったのか。
私を見て。
少しだけ。
目を細めた。
「……美月やな」
胸が。
きゅっとなる。
「うん」
「ほんまに」
何度も。
確かめるように。
夫は言った。
「美月なんやな」
「……うん」
夫が。
顔を覆った。
「意味分からん」
「私も」
「何で」
「うん」
「お前が」
顔を上げる。
「一ノ瀬紗良なんや」
「……分からない」
「ほんまに?」
「うん」
「嘘とか」
「ついてない」
「……」
「説明できるなら」
私は。
苦笑した。
「私が一番」
「説明してほしいよ」
夫は。
しばらく。
何も言わなかった。
◇◇◇
「美月」
「うん」
「一個」
夫が。
言いにくそうに。
視線を落とす。
「聞いていい?」
「うん」
「……帰ってくる気」
胸が。
止まりそうになった。
夫は。
続けた。
「ある?」
「……」
分かっていた。
いつか。
聞かれると。
でも。
実際に。
目の前で言われると。
思っていたより。
苦しかった。
「子どもらもおる」
「うん」
「星は」
少し。
笑う。
「もうお前がママやって」
「信じとる」
「……うん」
「他の子らも」
「もしかしたら」
「……」
夫が。
私を見る。
「家族」
言葉が。
止まる。
「また」
「戻れるんかなって」
その声に。
期待だけじゃない。
戸惑いも。
怖さも。
あった。
きっと。
この人自身も。
分からない。
亡くなった妻が。
別人の姿で戻ってきた。
だったら。
夫婦は。
元に戻るのか。
私は。
膝の上で。
手を握った。
逃げちゃいけない。
曖昧にしたら。
もっと。
傷つける。
「……戻れない」
夫の目が。
揺れた。
私は。
続けた。
「ごめん」
その言葉を。
口にして。
少し止まる。
また。
何でも。
謝ろうとしている。
私は。
首を振った。
「違う」
「……?」
「謝ることじゃないね」
一度。
息を吸う。
「私は」
「あなたの妻だった」
「うん」
「それは」
「今でも」
「なくしたくない」
夫の顔が。
少し。
歪む。
「あなたと結婚して」
「子どもたちが生まれて」
「楽しかったことも」
「いっぱいあった」
「……」
「喧嘩もした」
「いっぱい」
「嫌だったことも」
「寂しかったことも」
「……」
「でも」
私は。
夫を見る。
「全部」
「私の人生だった」
「……うん」
「だから」
「あなたとの時間を」
「間違いだったとは」
「思ってない」
夫が。
ゆっくり。
下を向いた。
「でも」
私は。
胸に手を当てる。
「もう」
「あなたの妻には」
「戻れない」
「……何で?」
低い声。
責めるというより。
確かめるような。
言葉だった。
私は。
少し迷った。
でも。
言う。
「私」
「今」
夫が。
顔を上げる。
「好きな人がいる」
「……」
静かになった。
夫の表情が。
止まる。
「……そっか」
それだけ。
でも。
声が。
明らかに。
変わった。
「事故のあと?」
「うん」
「その人」
「お前が美月やって」
「知っとる?」
「知ってる」
「……」
「最初から?」
「最初は」
私は。
少し苦笑する。
「信じてもらえなかった」
「そりゃそうやろ」
「うん」
「私もそう思う」
夫が。
少しだけ。
笑った。
でも。
すぐに。
真顔に戻る。
「その人」
「誰」
心臓が。
跳ねる。
まだ。
言わなくても。
いいのかもしれない。
陽向も。
一つずつでいいと。
言ってくれた。
でも。
ここまで。
ちゃんと。
区切りをつけるなら。
隠したくなかった。
「天城陽向」
「……」
夫が。
固まった。
「……誰?」
「ASTERの」
「いや」
夫が。
手を上げる。
「名前は知っとる」
「……」
「え?」
「お前」
「好きやったやつやん」
「……はい」
夫が。
数秒。
何も言わない。
そして。
ゆっくり。
額を押さえた。
「待って」
「うん」
「死んだと思っとった嫁が」
「人気女優の身体で戻ってきて」
「……うん」
「その嫁が」
「昔から好きやったトップアイドルと」
「付き合っとる?」
「……はい」
「意味分からん」
「私も」
「お前」
夫が。
思わず。
笑ってしまった。
「人生二周目」
「強すぎやろ」
「そういう言い方やめて」
私も。
少しだけ。
笑った。
ほんの少し。
昔みたいに。
◇◇◇
でも。
夫の笑顔は。
すぐに消えた。
「……好きなん」
「うん」
「その人のこと」
私は。
迷わなかった。
「好き」
夫が。
目を伏せる。
「そっか」
「……うん」
「俺より?」
その質問に。
胸が。
痛んだ。
比べるもの。
なのかな。
私は。
しばらく。
考えた。
「比べられない」
「……」
「あなたを好きだったのは」
「嘘じゃない」
「……うん」
「でも」
私は。
ゆっくり。
言葉を選ぶ。
「あなたを好きだった私と」
「今」
「陽向を好きな私は」
「違う時間を生きてる」
夫が。
黙って。
聞いている。
「昔に戻って」
「どっちが上だったとか」
「そういうことじゃない」
「……」
「あなたは」
「私の一度目の人生で」
「家族だった」
胸が。
少し。
締めつけられる。
「陽向は」
「今の私が」
「これから一緒に生きたい人」
「……」
夫は。
しばらく。
黙っていた。
そして。
小さく。
「きついな」
と。
言った。
私は。
何も。
言えなかった。
当然。
傷つく。
亡くなったと。
思っていた妻が。
戻ってきて。
その妻から。
別の人を。
好きだと言われる。
「でも」
夫が。
テーブルを見つめる。
「俺が」
「お前に」
「帰ってこいって言うのも」
「違うんかもな」
「……」
「だって」
少し。
苦笑する。
「帰ってきたところで」
「一ノ瀬紗良として」
「暮らすんやろ?」
「……うん」
「仕事もある」
「うん」
「それに」
夫が。
私を見る。
「お前」
「前と」
「ちょっと変わった」
胸が。
鳴る。
「変わった?」
「うん」
「前なら」
「こんなこと」
「言えんかったやろ」
「……」
「俺がどう思うか」
「子どもらがどう思うか」
「そっちばっか考えて」
「……」
「自分が」
「誰を好きとか」
「どうしたいとか」
夫が。
少し笑う。
「最後まで」
「言わんかったと思う」
私は。
何も。
言えなかった。
この人も。
知っていたんだ。
私が。
自分の気持ちを。
後回しにしていたこと。
全部ではなくても。
「……そうかも」
私は。
小さく笑った。
「今は」
「言うようにしてる」
「そっか」
「うん」
「……そのほうが」
夫が。
少し。
寂しそうに笑った。
「ええんかもな」
「……」
「俺とおったときに」
「そうできとったら」
一瞬。
声が。
詰まる。
「もうちょい」
「違ったんかな」
胸が。
痛くなった。
これは。
責めるための。
言葉じゃない。
後悔。
私にも。
ある。
「……分からない」
私は。
正直に言った。
「でも」
「私だけじゃない」
夫を見る。
「あなたも」
「言わなかったこと」
「いっぱいあったでしょ」
「……あるな」
「だから」
「どっちか一人が」
「悪かったわけじゃないと思う」
「……」
「合わなかったところも」
「うまく話せなかったところも」
「いっぱいあった」
「うん」
「それでも」
私は。
少し笑う。
「子どもたちが生まれたことは」
「私」
「絶対」
「後悔してない」
夫の目が。
少し赤くなる。
「俺も」
「うん」
「そこだけは」
「絶対」
「同じ」
胸が。
温かくなった。
夫婦には。
戻らない。
でも。
この人と。
完全な他人に。
なるわけでもない。
私たちには。
五人の子どもたちがいる。
それだけは。
変わらない。
◇◇◇
「美月」
「うん」
「子どもらに」
夫が。
ゆっくり。
言う。
「話そうと思う」
心臓が。
大きく鳴った。
「本当に?」
「ただ」
「うん」
「いきなり」
「お母さん生きとったぞ」
「は無理や」
「……それはそう」
「星みたいに」
「信じる子もおれば」
「怖がる子も」
「おるかもしれん」
「うん」
「だから」
夫は。
少し考える。
「一人ずつ」
「話したほうがええと思う」
「……うん」
同じことを。
星も。
言っていた。
「それと」
「何?」
「俺から」
「先に聞いてみる」
「……」
「ママのこと」
「話したいか」
「会いたいか」
胸が。
締めつけられる。
「うん」
「無理やりは」
「せん」
「うん」
「それでいい」
私は。
何度も。
頷いた。
「ありがとう」
「礼言われることじゃない」
「でも」
私は。
涙を拭う。
「子どもたちのこと」
「ずっと」
「見てくれてたから」
夫が。
少し。
眉を寄せる。
「俺の子でもあるやろ」
「うん」
「当たり前や」
「うん」
それでも。
私がいなくなってから。
大変だったはず。
悲しむ暇も。
なかったかもしれない。
「……大変だった?」
聞くと。
夫は。
少しだけ。
笑った。
「めちゃくちゃ」
「……だよね」
「お前」
「ようこんなん」
「毎日やっとったなって」
「今さら?」
「今さら」
私は。
思わず。
笑った。
「遅いわ」
「悪かった」
「ほんとに」
二人で。
笑う。
でも。
涙も。
出た。
もし。
生きていたときに。
こんなふうに。
話せていたら。
違ったことも。
あったのかもしれない。
でも。
今さら。
過去を。
やり直すことはできない。
だから。
これから。
できる形を。
考える。
◇◇◇
夫が。
少しだけ。
真面目な顔になる。
「あと」
「うん」
「その」
「天城……陽向?」
「うん」
「子どもらには」
「どうするん」
「……」
難しい。
私は。
少し。
考えた。
「今すぐ」
「みんなに言うつもりはない」
「そっか」
「まず」
「私がママだってことだけでも」
「大きすぎるから」
「うん」
「陽向のことは」
「そのあと」
「……」
夫が。
少し。
安心したように。
息を吐く。
「でも」
私は。
続ける。
「隠し続けるつもりもない」
夫が。
私を見る。
「ちゃんと」
「いつか」
「私が好きな人だって」
「伝えたい」
「……そっか」
「うん」
「星には?」
「もうバレてる」
「……」
夫が。
額を押さえた。
「星」
「情報量多すぎるやろ」
「本人も言ってた」
また。
少し。
笑った。
「……その人」
夫が。
静かに聞く。
「子どもらのこと」
「知っとるん?」
「うん」
「五人とも?」
「うん」
「……嫌がってない?」
私は。
首を振った。
「むしろ」
「私が子どもたちを忘れる必要ないって」
「言ってくれた」
夫の目が。
少し。
揺れる。
「そうか」
「うん」
「子どもたちは」
「私の一部だからって」
「……」
夫が。
しばらく。
何も言わなかった。
そして。
「なら」
小さく。
言った。
「ええ人なんやろな」
「……うん」
涙が。
少し。
滲んだ。
「すごく」
「そうか」
それ以上。
夫は。
何も聞かなかった。
◇◇◇
帰る前。
夫が。
立ち上がる。
私も。
立つ。
「じゃあ」
「うん」
「子どもらに」
「聞いてみる」
「うん」
「返事」
「連絡する」
「分かった」
一度。
夫が。
背を向ける。
でも。
扉の前で。
止まった。
「美月」
「ん?」
振り返る。
「……生きとって」
少し。
言葉を探す。
「よかった」
胸が。
詰まった。
「……うん」
「最初は」
夫が。
苦笑する。
「こんなんなら」
「元に戻れんかなって」
「思ったけど」
「……」
「でも」
私を見る。
「お前が」
「生きとるだけで」
「よかったんやと思う」
涙が。
落ちた。
「……ありがとう」
「子どもらに」
「また会えるとええな」
「うん」
「じゃ」
「うん」
夫が。
ドアを開ける。
私は。
その背中に。
言った。
「ねえ」
夫が。
振り返る。
「今まで」
「……」
「ありがとう」
「何や急に」
「言いたかったから」
私は。
少し笑う。
「夫婦として」
「うまくいかなかったことも」
「いっぱいあったけど」
「……」
「一緒に」
「子どもたちの親になってくれて」
「ありがとう」
夫の目が。
少し。
赤くなった。
「……俺も」
それだけ。
言って。
今度こそ。
部屋を出ていった。
私は。
追いかけなかった。
もう。
妻として。
その背中を。
追うことはない。
でも。
子どもたちの父親として。
これからも。
繋がっていく。
それでいい。
◇◇◇
夜。
陽向が。
私の部屋へ来た。
「……どうだった?」
玄関を開けた瞬間。
聞かれた。
私は。
少し笑う。
「ちゃんと」
「終わらせてきた」
陽向の目が。
揺れた。
「終わらせた?」
「うん」
リビングへ。
二人で移動する。
「夫婦には」
「戻らないって」
「言った」
「……」
「私」
陽向を見る。
「好きな人がいるって」
陽向の顔が。
一気に。
赤くなる。
「……俺?」
「他に誰がいるの」
「いや」
耳まで。
真っ赤。
「旦那さんに?」
「うん」
「俺の名前?」
「言った」
「……」
陽向が。
ソファに。
崩れ落ちた。
「無理」
「何が?」
「元旦那に」
顔を覆う。
「美月の彼氏として」
「認識された」
私は。
笑ってしまう。
「そこ?」
「そこ大事!」
「ふふっ」
でも。
少しして。
陽向は。
顔を上げた。
「美月」
「何?」
「大丈夫だった?」
「……」
私は。
考える。
寂しさ。
あった。
昔を。
思い出した。
もし。
あのとき。
もっと話せていたら。
そんな後悔も。
少し。
あった。
でも。
「大丈夫」
一度。
止まる。
「……ううん」
言い直す。
「寂しかった」
「うん」
「ちょっと」
「泣きそうだった」
「うん」
「でも」
陽向の隣へ。
座る。
「戻りたいとは」
「思わなかった」
陽向が。
静かに。
私を見る。
「ちゃんと」
私は。
陽向の手を取る。
「過去なんだって」
「思えた」
「……そっか」
「うん」
「私」
少し笑う。
「前の夫との時間を」
「消したくない」
「うん」
「これからも」
「子どもたちのことで」
「繋がると思う」
「うん」
「でも」
私は。
指を絡める。
「恋愛として」
「一緒にいたいのは」
陽向を見る。
「陽向」
その瞬間。
陽向の顔が。
ぐしゃっと。
崩れた。
「……何その顔」
「いや」
「嬉しい」
「泣くの?」
「泣かない」
目。
少し。
潤んでる。
「陽向」
「何?」
「私」
「うん」
「過去を」
「捨てて」
「陽向を選んだんじゃないよ」
「……」
「過去は」
「ちゃんと大事」
「うん」
「でも」
私は。
笑った。
「未来を」
「陽向と生きたい」
陽向が。
何も言えなくなる。
数秒。
そのまま。
私を見て。
そして。
急に。
抱きしめた。
「……美月」
「うん」
「それ」
「ヤバい」
「何が?」
「めちゃくちゃ嬉しい」
私は。
陽向の背中へ。
腕を回す。
「陽向」
「ん?」
「これからも」
「子どもたちのことで」
「前の夫と会うこと」
「あると思う」
「うん」
「嫌だったら」
「ちゃんと言ってね」
陽向が。
少し。
考える。
「嫉妬したら言う」
「うん」
「でも」
私の肩に。
顎を乗せる。
「会うなとは」
「言わない」
「……うん」
「だって」
「?」
「子どもたちの父親だもん」
胸が。
温かくなる。
「ありがとう」
「ただし」
「何?」
陽向が。
少し離れて。
私を見る。
「帰ってきたら」
「俺に会って」
「……」
「何それ」
「彼氏の充電」
「陽向が?」
「俺も」
「美月も」
私は。
笑った。
「じゃあ」
「今日」
「充電する?」
陽向が。
固まった。
「……美月」
「何?」
「最近」
「急に強い」
「嫌?」
「めちゃくちゃ好き」
笑いながら。
唇が。
重なった。
優しく。
短い。
キス。
私は。
もう。
迷わなかった。
前の夫に。
申し訳ないからでも。
紗良に。
申し訳ないからでもなく。
自分の気持ちで。
陽向を。
好きでいる。
◇◇◇
その夜。
夫から。
メッセージが届いた。
『明日、子どもらに聞いてみる』
私は。
画面を。
しばらく見つめた。
いよいよ。
次は。
子どもたち。
星以外の。
大切な。
四人。
会いたい。
怖い。
でも。
もう。
逃げない。
陽向との未来を。
選んだからといって。
母親を。
やめるわけじゃない。
母親だからといって。
自分の恋を。
捨てる必要もない。
私は。
どちらも。
大切にする。
それが。
今の。
高瀬美月だから。
私は。
夫へ。
一言。
返した。
『ありがとう。みんながどうしたいか、ちゃんと聞いてあげて』
送信。
そして。
陽向とのトーク画面を。
開く。
『今日はありがとう』
すぐ。
返事。
『何が?』
私は。
少し笑って。
打った。
『私の過去ごと、大切にしてくれて』
数秒後。
『当たり前』
続けて。
『過去があるから今の美月がいるんでしょ』
胸が。
温かくなる。
私は。
スマートフォンを。
胸に抱いた。
夫だった人との。
時間。
子どもたちとの。
時間。
紗良が。
生きた時間。
陽向と。
これから作る時間。
全部。
一本の道に。
繋がり始めている。
もう。
前の人生へ。
戻るんじゃない。
二つの人生を。
繋いで。
私は。
前へ。
進んでいく。



