目覚めたら、最推しの腕の中でした~1度終わった私の人生、もう一度恋をしました。~

星に。

本当のことを話せた。

そして。

次に会いたいと。

思ったのは。

もちろん。

他の子どもたち。

でも。

そのためには。

避けて通れない人がいる。

前の人生で。

私の夫だった人。

子どもたちの。

父親。

「……どうしよう」

私は。

スマートフォンを前に。

何度目か分からない。

ため息をついた。

連絡先は。

知っている。

以前。

陽向と一緒に。

夫のSNSを見たこともある。

でも。

今の私が。

突然。

『あなたの亡くなった妻です』

なんて。

連絡できるはずがない。

怖い。

星は。

私を信じてくれた。

でも。

夫は?

『そんなわけない』

と。

拒絶されたら。

それだけじゃない。

今の私には。

陽向がいる。

前の夫がいるのに。

別の男性と付き合っている。

そんなふうに。

見えるかもしれない。

私は。

もう死んだ人間。

戸籍上。

高瀬美月は。

存在していない。

でも。

心は。

まだ。

完全に。

過去と切り離されたわけじゃない。

「……難しすぎる」

テーブルに。

突っ伏す。

そのとき。

インターホンが鳴った。

◇◇◇

「ただいまー」

「ここ陽向の家じゃないよ」

「最近もう半分そうじゃない?」

「違います」

陽向が。

大きな紙袋を抱えて。

入ってくる。

「何それ?」

「差し入れ」

「また?」

「今日撮影で余った」

中を見る。

お菓子。

サンドイッチ。

そして。

チーズケーキ。

「……絶対私のために持ってきたでしょ」

「バレた?」

「チーズケーキ一番上だもん」

「美月メモ優秀」

「まだ使ってるの?」

「当然」

陽向が。

笑う。

でも。

すぐに。

私の顔を見た。

「で?」

「え?」

「何悩んでる?」

「……」

「分かる?」

「分かる」

即答。

「美月」

私の向かいに座る。

「考えすぎると」

「眉間めっちゃ寄る」

「そんなに?」

「あとコーヒー全然減ってない」

見る。

確かに。

淹れてから。

ほとんど。

飲んでいなかった。

「……夫のこと」

陽向の表情が。

少し変わった。

「前の?」

「うん」

私は。

ゆっくり頷いた。

「子どもたちに会うなら」

「やっぱり」

「話さないといけないと思う」

「……うん」

「星だけで」

「全部動かすわけにはいかないし」

「うん」

「でも」

言葉が。

止まる。

陽向は。

急かさない。

「何?」

「……怖い」

ようやく。

言えた。

「信じてくれないのが?」

「それも」

「他には?」

私は。

手を握る。

「陽向のこと」

「……俺?」

「だって」

私は。

陽向を見る。

「私」

「前の人生では」

「結婚してた」

「うん」

「夫がいて」

「今も」

「子どもたちのお父さんとして」

「生きてる」

「……うん」

「なのに」

「私には」

声が。

小さくなる。

「今」

「陽向がいる」

陽向は。

何も言わなかった。

「夫から見たら」

「私は」

「死んだと思ってた妻が」

「別の女の人の姿で帰ってきて」

「しかも」

「別の男と付き合ってる」

「……」

「最悪に見えるよね」

陽向が。

少しだけ。

眉を寄せた。

「美月」

「うん」

「一個ずつでよくない?」

「え?」

「今日」

指を一本立てる。

「旦那さんに」

「俺のことまで全部言う必要ある?」

「……」

「まず」

二本目。

「美月が生きてる」

「それを」

「信じてもらう」

「……」

「次」

「子どもたちに」

「どうするか話す」

「……うん」

「俺のことは」

少し笑う。

「そのあとでいいじゃん」

私は。

陽向を見る。

「嫌じゃないの?」

「何が?」

「私が」

「前の夫と会うの」

一瞬。

陽向が。

黙る。

「……嫌じゃないって言ったら」

「たぶん嘘」

「え?」

「そりゃ」

少し。

困ったように笑う。

「好きな人が」

「前の旦那と会うんだから」

「ちょっと複雑」

胸が。

小さく鳴る。

「でも」

陽向が続ける。

「美月にとって」

「その人は」

「ただの元カレとかじゃない」

「……」

「子どもたちのお父さん」

「うん」

「それに」

「美月の三十四年の中に」

「ちゃんといた人」

「……うん」

「そこ」

「俺が消したいとか」

「思ってない」

胸の奥。

じわっと。

温かくなる。

「陽向」

「だから」

少し。

目を逸らす。

「多少嫉妬はするけど」

「するんだ」

「するよ!」

「ふふっ」

「笑うな」

でも。

その正直さが。

嬉しかった。

◇◇◇

その夜。

星から。

電話が来た。

『ママ』

「うん」

その呼び方に。

まだ。

毎回。

胸が。

柔らかくなる。

『パパのことなんだけど』

心臓が。

跳ねた。

「……うん」

『私』

星が。

少し。

言いにくそうにする。

『まだ何も言ってない』

「うん」

『でも』

少し。

間。

『ママが会いたいなら』

『私から』

『話すきっかけ作ろうか?』

「……」

私は。

目を閉じた。

会いたい。

怖い。

でも。

逃げたくない。

「星」

『うん』

「ママ」

一度。

息を吸う。

「会いたい」

電話の向こう。

星が。

少し。

笑った気がした。

『分かった』

「でも」

『うん』

「星だけに」

「全部背負わせたくない」

『……』

「話すとき」

「ママもいる」

『本当に?』

「うん」

怖い。

でも。

これは。

私のこと。

星に。

代わりに説明させるのは。

違う。

「私が」

「ちゃんと話す」

『……うん』

「星は」

「そばにいてくれる?」

『当たり前じゃん』

その声。

泣きそうになった。

「ありがとう」

『じゃあ』

星が。

少し考える。

『パパに』

『会ってほしい人がいるって言ってみる』

「……うん」

『ママ』

「何?」

『大丈夫?』

私は。

一瞬。

いつもの答えを。

言いそうになる。

でも。

やめた。

「……大丈夫じゃない」

正直に。

言う。

「めちゃくちゃ怖い」

星が。

少し笑った。

『そっか』

「うん」

『じゃあ』

優しい声。

『一緒に怖がろ』

「……」

その言葉。

どこか。

陽向に。

似ている。

「うん」

私は。

笑った。

「一緒に」

◇◇◇

そして。

数日後。

指定された場所は。

静かな。

ホテルのラウンジだった。

人目がある。

でも。

個室に近い。

奥の席。

私は。

早く着きすぎていた。

手が。

震える。

何度。

水を飲んでも。

喉が乾く。

「ママ」

隣にいる。

星が。

私の手を見る。

「冷たい」

「緊張してる」

「うん」

「逃げたい」

「……逃げる?」

私は。

首を振った。

「逃げない」

「そっか」

星が。

私の手を。

握ってくれた。

その瞬間。

入り口。

一人の男性が。

入ってきた。

「……」

息が。

止まった。

夫。

久しぶりに。

見る。

変わっている。

少し。

痩せた気がする。

顔も。

疲れている。

胸が。

痛んだ。

私は。

この人を。

愛していなかったわけじゃない。

楽しい時間も。

あった。

一緒に。

子どもたちを育てた。

腹が立ったことも。

寂しかったことも。

たくさんあった。

でも。

全部。

私の一度目の人生。

「星」

夫が。

こちらへ来る。

「会ってほしい人って……」

言葉が。

止まった。

私を見る。

当然。

知っている。

一ノ瀬紗良。

有名女優。

「……一ノ瀬紗良さん?」

「はい」

私は。

立ち上がる。

頭を下げる。

「初めまして」

その言葉が。

胸に刺さる。

夫に。

初めまして。

なんて。

「どういうこと?」

夫が。

星を見る。

「何でお前が」

「女優さんと?」

「パパ」

星が。

緊張した声で。

言う。

「座って」

「いや」

「説明して」

「するから」

星が。

私を見る。

私は。

小さく。

頷いた。

三人。

座る。

沈黙。

夫は。

私と。

星を。

交互に見ている。

「……何?」

「星」

「モデル始めたから」

「その関係?」

「違う」

星が。

首を振る。

「じゃあ何」

「……」

星が。

私を見る。

私は。

自分の手を。

膝の上で握る。

私が。

話す。

「突然」

声が。

震える。

「こんなことを言われても」

「信じられないと思います」

夫の眉が。

寄る。

「……はい?」

「でも」

胸に。

手を置く。

「聞いてほしいことがあります」

夫が。

じっと。

私を見る。

「何でしょう」

敬語。

当たり前。

苦しい。

私は。

一度。

目を閉じた。

そして。

言った。

「高瀬美月の」

夫の顔が。

変わった。

「……妻の名前を」

「どうして」

「私は」

続ける。

「高瀬美月です」

空気が。

止まった。

◇◇◇

夫は。

しばらく。

何も言わなかった。

そして。

「……何ですか」

低い声。

「それ」

「パパ」

「星」

夫が。

娘を見る。

「お前」

「この人に」

「何話した?」

「違う!」

星が。

すぐに。

首を振る。

「私じゃない」

「じゃあ何だよ」

夫が。

私を見る。

怒り。

困惑。

そして。

明らかな。

警戒。

当然だ。

「うちのこと」

「どこまで調べたんですか?」

「……調べたんじゃない」

「じゃあ」

「何で」

声が。

強くなる。

「死んだ妻の名前使って」

「そんなこと言うんですか」

胸が。

痛む。

でも。

逃げない。

「信じてもらえないのは」

「分かっています」

「当たり前でしょ」

「はい」

「妻は」

夫が。

唇を噛む。

「死んだんです」

「……うん」

「俺」

声が。

震えた。

「確認しました」

その言葉。

星のときと。

同じ。

私は。

自分が。

どれほど。

残酷なことを。

言っているのか。

改めて。

思い知る。

「……うん」

「葬式もした」

「うん」

「子どもら」

「ずっと」

夫が。

拳を握る。

「どんな思いで」

「……」

「分かってます?」

「分かるよ」

思わず。

昔の口調で。

答えた。

夫が。

止まった。

「……」

私も。

気づく。

一ノ瀬紗良として。

丁寧に。

話していたのに。

今。

いつもの。

私の言い方が。

出た。

「分かる」

私は。

もう一度。

言った。

「だって」

涙が。

溢れる。

「私も」

「ずっと」

「子どもたちに会いたかったから」

「……」

「星が」

「泣いてるのも」

「遠くからしか」

「見られなかった」

夫の目が。

揺れる。

「……何?」

「事故のあと」

「私は」

「この身体で」

「目を覚ました」

「……」

「自分の身体が」

「死んだことも」

「あとから知った」

「……」

「信じられなかった」

涙を。

拭う。

「私だって」

「何でこんなことになったのか」

「分からない」

夫が。

何も言わない。

ただ。

私を。

見ている。

「でも」

「私しか知らないこと」

「ある」

「……」

「何を」

私は。

震える。

こんな形で。

夫との思い出を。

証明に使うなんて。

変な感じ。

「一番下の子が」

「夜泣きひどかったとき」

「……」

夫の表情が。

少し変わる。

「あなた」

「夜中」

「抱っこ代わってくれたことあったよね」

「……」

「でも」

私は。

涙の中。

少し笑う。

「五分で」

「腰痛いって」

「私に戻した」

夫が。

目を見開く。

「……」

「私」

「そのあと」

「めっちゃ怒った」

「……」

「『五分で何が腰痛いや』って」

星が。

隣で。

少し。

吹き出しそうになる。

でも。

夫は。

笑わない。

「それくらい」

「星から聞ける」

「……うん」

「じゃあ」

私は。

一度。

考える。

夫と。

私だけ。

知っていること。

そして。

ふっと。

思い出す。

「結婚したばっかりの頃」

夫の目が。

揺れる。

「あなた」

「私に」

「一回だけ」

「手紙くれたよね」

「……」

「喧嘩したあと」

「口じゃ」

「言えないからって」

「……」

「最後」

涙が。

落ちる。

「『俺は上手く言えんけど、美月がおらんと困る』って」

夫の顔から。

血の気が。

引いた。

「……何で」

「その手紙」

私は。

笑う。

「捨ててって言われたけど」

「捨ててない」

「……」

「クローゼットの」

「昔の写真入れてる箱の」

「底」

夫が。

息を止めた。

「青い封筒」

「……」

「まだ」

「あるなら」

「見て」

「……」

夫の手が。

震えていた。

◇◇◇

「……星」

夫が。

娘を見る。

「お前」

「本当に」

「何も教えてない?」

「教えてない」

「手紙なんて」

星が。

首を振る。

「知らない」

夫が。

私を見る。

「……」

信じた。

わけじゃない。

まだ。

理解できない顔。

でも。

さっきまでとは。

明らかに違う。

「……もし」

夫が。

ゆっくり。

口を開く。

「本当に」

「美月だとして」

胸が。

大きく鳴る。

「……うん」

「何で」

夫の目が。

赤くなる。

「帰ってこなかった?」

その言葉に。

胸が。

引き裂かれた。

「帰りたかった」

すぐに。

答えた。

「だったら!」

夫の声が。

大きくなる。

「何で!」

「帰れなかったの!」

私も。

声が震える。

「この顔で!」

「……」

「帰って」

涙が。

止まらない。

「誰が信じるの!?」

夫が。

言葉を失う。

「私だって」

「何回も」

「帰りたかった!」

「……」

「子どもたちに」

「ママだよって」

「言いたかった!」

「……」

「でも」

私は。

自分の顔を指す。

「一ノ瀬紗良なんだよ!」

「……」

「高瀬美月の顔じゃない!」

夫が。

下を向く。

「私」

声が。

崩れる。

「星に会うだけでも」

「ずっと怖かった」

「……」

「信じてもらえなかったら」

「二回」

「子どもを失うみたいで」

「怖かった」

静かになった。

夫も。

泣いていた。

私は。

初めて。

気づいた。

この人も。

妻を。

失った。

私が。

子どもたちを失ったように。

夫も。

あの日。

突然。

家族を。

失った。

「……美月」

小さな声。

私は。

顔を上げた。

今。

確かに。

呼ばれた。

「……」

夫自身も。

驚いたような顔をしている。

「今」

星が。

泣きながら。

言った。

「パパ」

「ママって」

「……」

夫は。

顔を覆った。

「分からん」

震える声。

「こんなん」

「分かるわけない」

「……うん」

「でも」

顔を上げる。

私を見る。

「喋り方」

「……」

「怒り方」

「……」

「さっきの」

少しだけ。

泣きながら。

苦笑した。

「『五分で何が腰痛いや』」

「……」

「美月や」

涙が。

一気に。

溢れた。

◇◇◇

夫は。

その日。

全部を。

信じたわけではなかった。

当たり前だと思う。

でも。

最後に。

言った。

「手紙」

「帰ったら見る」

「……うん」

「それで」

「……」

「もう一回」

私を見る。

「話したい」

「うん」

私は。

頷いた。

「何回でも」

そして。

夫が。

立ち上がる。

そのとき。

私は。

思わず。

呼び止めた。

「待って」

「……何?」

聞きたいこと。

ずっと。

聞けなかった。

「子どもたち」

声が。

震える。

「元気?」

夫の顔が。

苦しそうに歪んだ。

「……元気に」

少し。

間。

「しようとはしてる」

星が。

俯く。

胸が。

痛い。

「会いたい」

私は。

言った。

「みんなに」

「……」

「会わせてほしい」

夫は。

すぐに。

答えなかった。

長い。

沈黙。

そして。

「俺一人では」

ゆっくり。

言う。

「決められん」

「……うん」

「子どもらにも」

「聞く」

その言葉。

私は。

すぐに。

頷いた。

「うん」

「それでいい」

信じるか。

会いたいか。

子どもたちが。

決める。

「ただ」

夫が。

私を見る。

「星」

「うん」

「お前は」

「本当に」

「この人が」

言葉が。

止まる。

星が。

迷わず。

答えた。

「ママだよ」

「……」

「私」

星が。

私の手を。

握る。

「分かるもん」

夫が。

少しだけ。

目を閉じた。

「……そっか」

それだけ。

言って。

帰っていった。

◇◇◇

夫が。

見えなくなったあと。

私は。

全身から。

力が抜けた。

「……怖かった」

星が。

私の肩に。

寄り添う。

「頑張ったね」

「うん」

「ママ」

「何?」

「パパ」

「途中から」

「ママ見る目だったよ」

「……」

涙が。

また。

落ちた。

「本当?」

「うん」

星が。

笑う。

「呆れた顔とか」

「完全に」

「昔のパパだった」

「何それ」

「ママが怒ってるときの」

「『また始まった』って顔」

「……」

思わず。

笑った。

泣きながら。

笑った。

◇◇◇

夜。

陽向に。

全部話した。

話し終わるまで。

陽向は。

何も言わなかった。

「……そっか」

最後。

それだけ。

言って。

私の手を握る。

「信じてもらえそう?」

「分かんない」

「うん」

「でも」

私は。

少し笑う。

「美月って」

「呼ばれた」

陽向の手が。

一瞬。

止まった。

「……旦那さんに?」

「うん」

「……」

「陽向?」

「いや」

何とも言えない顔。

「ちょっとだけ」

「何?」

「嫉妬した」

私は。

目を丸くする。

「今!?」

「だって」

陽向が。

眉を下げる。

「俺が」

「すげえ大事にしてる名前」

「昔から呼んでた人なんだなって」

「……」

可愛い。

思ったけど。

言ったら。

怒りそう。

「でも」

陽向が。

すぐに。

笑った。

「よかったな」

「……うん」

「美月が」

「一回目の人生に」

「ちゃんと」

「戻れる道」

胸が。

小さく。

揺れる。

「戻る」

私は。

その言葉を。

繰り返した。

すると。

陽向が。

少し慌てる。

「いや」

「俺と別れて戻れって意味じゃないからな!」

「分かってるよ」

「マジ?」

「うん」

私は。

陽向の手を。

握り返した。

「戻るんじゃない」

「……?」

「繋げたい」

私は。

笑う。

「前の人生と」

「今の人生」

「……」

「どっちも」

「私だから」

陽向が。

ゆっくり。

笑った。

「うん」

「それがいい」

◇◇◇

その夜。

帰宅した夫から。

星に。

一枚の写真が。

送られてきた。

それを。

星が。

私へ転送してくれた。

青い。

古い封筒。

そして。

短いメッセージ。

『あった』

それだけ。

私は。

画面を見つめた。

涙が。

滲む。

さらに。

数分後。

もう一通。

『子どもたちに話す前に、もう一度会いたい』

私は。

しばらく。

その文字を。

見ていた。

怖い。

でも。

今度は。

逃げない。

『分かった』

送信する。

そして。

少し迷って。

もう一文。

加えた。

『話したいこと、私もたくさんある』

送った。

前の夫と。

これからの私。

母親として。

妻だった人間として。

そして。

陽向を愛する。

今の高瀬美月として。

ちゃんと。

向き合うために。

私には。

まだ。

越えなければならない。

大きな一歩が。

残っていた。