目覚めたら、最推しの腕の中でした~1度終わった私の人生、もう一度恋をしました。~

星との追加撮影から。

数日後。

また。

同じブランドの仕事が入った。

今回は。

前回撮影した写真を使った。

短い動画撮影と。

インタビュー。

そして。

星も一緒。

その知らせを聞いたとき。

私は。

もう。

前みたいに。

怖いだけではなかった。

もちろん。

緊張はする。

会えば。

抱きしめたくなる。

もっと。

近づきたくなる。

それでも。

「……会いたい」

ちゃんと。

そう思えた。

星の母親としてではなく。

今は。

一ノ瀬紗良として。

少しずつでも。

この子のそばにいられるなら。

それでいい。

少なくとも。

今は。

そう思うことにした。

◇◇◇

「おはようございます!」

スタジオに入ると。

すぐに。

聞き慣れた声。

「あ」

星が。

私を見つける。

その瞬間。

ぱっと。

表情が明るくなった。

「紗良さん!」

「おはよう、星ちゃん」

前より。

ずっと自然に。

名前が呼べた。

星も。

嬉しそうに。

こちらへ来る。

「今日また一緒ですね」

「うん」

「よかったぁ」

「え?」

「知ってる人いると安心するから」

胸が。

きゅっとなる。

知ってる人。

星にとって。

私はもう。

完全な知らない人ではなくなった。

それだけで。

嬉しい。

「私も」

「え?」

「星ちゃんいてくれてよかった」

そう言うと。

星が。

照れたように笑う。

その顔。

本当に。

変わらない。

昔。

私に褒められたときも。

同じ顔をしていた。

「今日も頑張ろうね」

「はい!」

思わず。

頭を撫でたくなる。

でも。

今日は。

手を伸ばさなかった。

我慢。

ではなく。

今の私たちの距離を。

大切にしたかった。

◇◇◇

午前の撮影は。

順調だった。

前回とは違って。

星もかなり慣れている。

「高瀬さん、いいね!」

「はい!」

「もう少し一ノ瀬さん側に寄って」

「はい」

星が。

私の隣に来る。

以前は。

この距離だけで。

涙が出そうだった。

でも。

今日は。

ちゃんと。

笑えた。

「紗良さん」

小さな声で。

星が呼ぶ。

「何?」

「私」

カメラに聞こえないくらいの声。

「前より上手くなりました?」

「うん」

即答。

「本当ですか?」

「本当」

「やった」

「表情も自然になったし」

「うん」

「立ち方も前より綺麗」

「……」

星が。

私を見る。

「何?」

「やっぱり」

「?」

「褒め方が」

少し。

不思議そうな顔。

「ママっぽい」

胸が。

ドクン。

また。

その言葉。

「……そう?」

「はい」

そこへ。

カメラマンの声。

「二人とも、こっちお願いしまーす!」

「あ、はい!」

星が。

前を向く。

私も。

笑顔を作る。

でも。

胸の奥に。

星の言葉が。

ずっと。

残っていた。

◇◇◇

昼休憩。

前回と同じように。

星が。

私のところへやってきた。

「紗良さん」

「うん?」

「今日も一緒に食べていいですか?」

「もちろん」

今度は。

迷わず言えた。

二人で。

お弁当を広げる。

「今日ちゃんと朝ご飯食べた?」

言ってから。

私は。

「あ」

と。

口を押さえた。

星が。

吹き出す。

「また!」

「ごめん」

「だから嫌じゃないですって」

笑っている。

「今日は食べました」

「何?」

「ご飯とお味噌汁」

「おかずは?」

「卵焼き」

「それなら合格」

「ほら!」

星が。

お箸を持ったまま。

私を指す。

「何?」

「それ!」

「え?」

「ママも言ってました」

胸が。

また。

大きく鳴る。

「ちゃんと食べたって言ったら」

星は。

少し懐かしそうに笑う。

「『それなら合格』って」

「……」

言った。

確かに。

私は。

よく言っていた。

星だけじゃない。

子どもたちが。

何かできたとき。

「はい、合格」

って。

「……偶然だよ」

やっと。

そう答える。

でも。

星は。

じっと。

私を見る。

「紗良さん」

「何?」

「前から思ってるんですけど」

「うん」

少し。

迷ったような顔。

「本当に」

胸が。

ざわつく。

「ママに似てるんです」

「……」

時間が。

止まったようだった。

「顔は」

星が。

慌てて付け足す。

「全然違いますよ?」

「うん」

「声も違うし」

「うん」

「ママは芸能人じゃなかったし」

「……うん」

「でも」

星は。

私を見つめる。

「言うこととか」

「笑い方とか」

「人の心配するときの顔とか」

一つずつ。

言われるたび。

胸が。

締めつけられる。

「あと」

「……」

「私が緊張してるとき」

「大丈夫って言ってから」

「失敗してもやり直せるって言ったでしょ?」

「うん」

「それも」

星が。

小さく笑う。

「ママがよく言ってた」

もう。

誤魔化せる気がしない。

でも。

本当のことを。

言えるわけもない。

「星ちゃん」

「はい」

「お母さんのこと」

声が。

少し震える。

「すごく好きだったんだね」

星が。

目を伏せる。

「……はい」

「今も?」

「今も」

迷いのない答え。

胸の奥が。

熱くなる。

「大好きです」

泣きそうになる。

でも。

星が。

先に笑った。

「だからかな」

「?」

「紗良さんといると」

「ママのこと思い出すんです」

「……」

「最初は」

星が。

少し申し訳なさそうに。

「それって紗良さんに失礼かなって思ってました」

「どうして?」

「だって」

「紗良さんは紗良さんなのに」

その言葉に。

息が止まった。

――紗良さんは紗良さん。

そう。

そうなんだ。

今の身体は。

紗良。

でも。

中にいる私は。

美月。

そして。

星は。

何も知らないまま。

人は。

見た目だけじゃないと。

言ってくれているような気がした。

「でも最近」

星が続ける。

「似てるから好きなんじゃなくて」

「……」

「紗良さん自身のことも」

にこっと。

笑った。

「好きなんだなって思って」

胸の奥が。

大きく揺れた。

「……そっか」

「はい」

「ありがとう」

今度は。

涙を。

どうしても。

抑えられなかった。

一滴。

頬を流れる。

「また泣いてる」

星が笑う。

「紗良さん、意外と泣き虫ですよね」

「……そうかも」

「ママも結構泣き虫でした」

「……」

「ドラマとか見ても泣くし」

「それは感動したら泣くでしょ」

「ほら!」

「え?」

「今の言い方も似てる!」

「……」

二人で。

顔を見合わせる。

そして。

笑った。

久しぶりだった。

娘と。

こんなふうに。

何でもないことで。

笑うのは。

◇◇◇

「そういえば」

星が。

お弁当を食べながら。

言った。

「紗良さん」

「何?」

「陽向くんとは」

危うく。

お茶をこぼしそうになった。

また。

その話。

「……うん」

「最近も仲いいんですか?」

「まあ……」

彼氏です。

とは。

言えない。

絶対に。

「たまに会うよ」

「ええっ!」

星の目が。

一瞬で。

輝いた。

「本当に!?」

「う、うん」

「いいなあ!」

この反応。

完全に。

ファン。

「LINEとかもするんですか?」

「……する」

「すごい!」

星が。

羨ましそうに。

私を見る。

「私も一回でいいから会いたいなあ」

「……」

この前。

陽向も。

会いたいと言っていた。

本当に。

会わせてあげたい。

でも。

どうやって?

一ノ瀬紗良が。

若い新人モデルの星を。

幼なじみの天城陽向に紹介する。

仕事上なら。

不自然ではない。

むしろ。

今日。

もし。

陽向が近くにいたら――。

そんなことを。

考えた瞬間。

スタジオの外が。

少し。

騒がしくなった。

「ASTERさん入られまーす!」

「……え?」

私と。

星。

同時に。

顔を上げた。

「今」

星が。

固まる。

「ASTERって……」

「言ったね」

「え」

「え?」

「えええええええ!?」

「星ちゃん、声!」

慌てて。

口元に。

指を立てる。

でも。

星は。

完全に。

パニック。

「待って待って待って!」

「落ち着いて」

「無理です!」

「私も昔なら無理だったから分かるけど」

「え?」

「あ」

しまった。

「昔?」

星が。

不思議そうにする。

「いや」

私は。

必死で誤魔化す。

「人気あるから」

「そりゃ会ったら緊張するよねって」

「そ、そうです!」

危ない。

本当に。

気を抜くと。

母親としてだけじゃなく。

ファンだった美月まで。

出てしまう。

◇◇◇

そして。

数分後。

スタジオの入口。

スタッフと。

話しながら。

ASTERのメンバーたちが。

入ってきた。

その中。

「……」

見慣れた。

ピンクが似合う人。

陽向。

星の身体が。

横で。

完全に固まった。

「……」

「星ちゃん?」

「……本物」

小さな声。

「うん」

「本物の」

「うん」

「天城陽向……」

「呼び捨てになってるよ」

「無理です」

顔。

真っ赤。

手。

震えてる。

昔。

私が。

テレビの向こうの陽向を見ながら。

「いつか会えたらなぁ」

なんて。

言ったとき。

星は。

隣で笑っていた。

その娘が。

今。

本物の陽向を。

目の前にしている。

私の胸まで。

熱くなった。

そのとき。

陽向が。

こちらに気づいた。

一瞬。

私を見る。

そして。

隣の星を見る。

陽向の目が。

少しだけ。

大きくなった。

分かった。

この子が。

星。

私の娘だって。

そして。

陽向は。

いつもの。

誰にでも向ける。

アイドルの笑顔ではなく。

少しだけ。

柔らかい顔で。

こちらへ歩いてきた。

「お疲れ」

「お疲れさま」

私は。

なるべく。

普通に返す。

横を見る。

星。

動かない。

「……星ちゃん?」

「……」

陽向が。

少し。

屈むようにして。

星を見る。

「高瀬星ちゃん?」

「っ!」

名前を。

呼ばれた瞬間。

星の目が。

見開かれた。

「は、はい!」

声。

裏返った。

陽向が。

笑う。

「あははっ」

「そんな緊張しなくて大丈夫だよ」

「む、無理です……!」

「無理?」

「ずっと……」

星が。

必死に。

言葉を探す。

「ずっとファンで……」

陽向が。

私を見る。

ほんの一瞬。

目が合う。

――知ってる。

その目が。

そう言っていた。

「ありがとう」

陽向は。

星へ。

笑いかける。

「嬉しい」

星の目に。

みるみる。

涙が溜まった。

「え!?」

陽向が。

焦る。

「ちょ、泣いた!?」

「す、すみません!」

「いやいや!」

陽向が。

両手を振る。

「謝らなくていいって!」

私は。

思わず。

笑いそうになった。

ああ。

似てる。

私も。

陽向に。

同じこと。

何度も言われた。

「陽向」

私が呼ぶ。

「何?」

「星ちゃん」

「うん」

「ずっと会いたかったんだって」

陽向の表情が。

少しだけ。

真面目になる。

「俺に?」

星が。

頷く。

「……はい」

そして。

星は。

少し迷ってから。

言った。

「ママが」

陽向の目が。

揺れた。

「お母さん?」

「はい」

星は。

涙を拭う。

「ママが」

「陽向くんのこと」

「ずっと大好きだったんです」

「……」

陽向が。

静かになる。

私も。

何も言えない。

「だから」

星が。

少し笑う。

「私も小さい頃から」

「一緒にテレビ見てて」

「いつか」

声が。

少し震える。

「ママと一緒に会えたらいいねって」

胸が。

痛い。

陽向も。

私を見ない。

ちゃんと。

星だけを見ている。

「でも」

「ママは」

星が。

少し俯く。

「もういないから」

「……うん」

陽向の声が。

すごく優しい。

「だから」

星が。

顔を上げる。

「私が会えたら」

「ママも」

少し。

泣きながら笑った。

「喜んでくれるかなって」

ダメ。

涙が。

出そうになる。

でも。

今。

私が泣いたら。

おかしい。

陽向が。

星を。

まっすぐ見る。

そして。

言った。

「喜んでると思うよ」

「……!」

星の目が。

大きくなる。

「本当に?」

「うん」

陽向は。

少しだけ。

笑った。

「だって」

ほんの一瞬。

私のほうへ。

視線を向ける。

「自分の娘が」

「自分の好きだった人に会えて」

「こんなに喜んでたら」

胸が。

締めつけられる。

「絶対」

「お母さんも嬉しいでしょ」

「……」

星が。

泣きながら。

何度も頷く。

「はい……」

「それに」

陽向が。

続ける。

「星ちゃんが」

「お母さんとの思い出」

「今も大事にしてるの」

「それが一番」

少し笑う。

「嬉しいんじゃないかな」

「……陽向」

私の口から。

小さく。

名前が出た。

陽向は。

こっちを見ない。

でも。

分かる。

今。

私に。

言っている。

美月。

嬉しいだろ?

そう。

言われている気がした。

嬉しい。

本当に。

嬉しいよ。

◇◇◇

「写真……」

星が。

おずおずと。

スマートフォンを持つ。

「撮ってもらってもいいですか?」

「もちろん」

陽向が。

笑う。

「紗良も入る?」

「え?」

私が。

固まる。

「せっかくだし」

陽向が。

当たり前のように言う。

星も。

ぱっと。

こちらを見る。

「紗良さんも!」

「私?」

「お願いします!」

断れない。

いや。

断りたくない。

三人。

並ぶ。

陽向。

私。

星。

「じゃあ撮りますねー」

スタッフが。

スマートフォンを持つ。

私は。

星の隣。

陽向は。

反対側。

ほんの少し。

不思議な並び。

私が。

母親だとは。

誰も知らない。

陽向と私が。

恋人だとも。

誰も知らない。

でも。

写真の中。

そこには。

今の私が。

一番大切にしたい二人が。

いる。

「はい、チーズ!」

カシャ。

シャッター音。

その瞬間。

胸が。

いっぱいになった。

もし。

前の人生の私に。

この写真を見せたら。

何て言うだろう。

たぶん。

信じない。

「いやいやいや」

って。

笑うと思う。

だって。

最推し。

娘。

そして。

私。

三人で。

写真を撮る日が来るなんて。

考えたことすら。

なかった。

◇◇◇

「ありがとうございます!」

星が。

何度も。

陽向に頭を下げる。

「こちらこそ」

「本当に」

「今日死んでもいいです」

「ダメ!」

私と。

陽向の声が。

同時に出た。

「……」

星が。

目を丸くする。

私も。

陽向も。

固まる。

「え?」

「いや」

陽向が。

先に誤魔化す。

「それファンの子よく言うけど」

「ダメだから」

「そうそう!」

私も。

必死に頷く。

「そんなこと言っちゃダメ」

「……」

星が。

私を見る。

それから。

陽向を見る。

「二人」

「え?」

「何?」

「なんか」

少し笑う。

「似てますね」

「俺と美月……」

陽向が。

言いかける。

「ん?」

星が。

首を傾げる。

「え?」

私の心臓が。

止まりそうになる。

陽向。

今。

美月って。

「……ミヅ?」

星が。

聞き返す。

「いや!」

陽向が。

明らかに。

焦った。

「何でもない!」

「絶対何かありましたよね?」

「ないない!」

「陽向」

私は。

低い声で呼ぶ。

「……ごめん」

小声。

本当に。

危なすぎる。

◇◇◇

その日の撮影が終わるころ。

星が。

私のところへ来た。

「紗良さん」

「何?」

「今日」

「うん」

「ありがとうございました」

「私は何もしてないよ」

「でも」

星が。

嬉しそうに。

スマートフォンを見る。

さっき撮った。

三人の写真。

「これ」

「家宝にします」

「家宝?」

思わず笑う。

「ママにも見せたかったな」

その一言に。

胸が。

止まりそうになる。

でも。

今度は。

泣かなかった。

だって。

見てる。

今。

一緒に。

写ってる。

「……見てると思うよ」

私は。

静かに言った。

星が。

顔を上げる。

「どこかで」

「うん」

「ちゃんと」

「見てると思う」

星は。

少しだけ。

寂しそうに。

でも。

嬉しそうに。

笑った。

「そうだったらいいな」

「うん」

「絶対」

私は。

言い切った。

そして。

星が帰ろうとしたとき。

「あ、紗良さん」

「何?」

振り返る。

星は。

少し。

迷ったような顔。

「私」

「うん」

「やっぱり」

胸が。

ざわつく。

「紗良さんって」

「……」

「ママにすごく似てます」

「……」

「今日」

星が。

少し笑った。

「陽向くんと話してる紗良さん見て」

心臓が。

跳ねる。

「ママも」

「テレビの陽向くん見てるとき」

「同じ顔してたなって」

「……え?」

「すごく」

星が。

優しく笑う。

「嬉しそうな顔」

何も。

言えなくなった。

「変ですよね」

「顔は全然違うのに」

「……」

「でも」

星は。

自分の胸に手を当てる。

「ここが」

「似てるって言ってる感じがするんです」

胸が。

大きく。

揺れた。

「……星ちゃん」

「だから」

少し。

恥ずかしそうに。

笑う。

「紗良さんといると」

「ママが」

「ちょっとだけ帰ってきたみたいで」

「……っ」

もう。

ダメだった。

涙が。

溢れた。

「紗良さん!?」

「ごめん」

私は。

慌てて。

笑う。

「今日」

「涙腺弱いみたい」

「大丈夫ですか?」

「うん」

でも。

本当は。

叫びたかった。

星。

ママだよ。

帰ってきてるよ。

ここにいる。

あなたの前に。

いるんだよ。

でも。

言えない。

だから。

私は。

今できる。

精一杯の言葉を。

星に渡した。

「星ちゃん」

「はい」

「もし」

声が。

震える。

「私といることで」

「お母さんのこと」

「思い出せるなら」

「……」

私は。

笑った。

「いつでも」

「会いにきて」

星の目が。

少し。

大きくなる。

「いいんですか?」

「うん」

「迷惑じゃ……」

「絶対に」

私は。

すぐに言った。

「迷惑じゃない」

絶対。

そんなこと。

あるわけない。

「むしろ」

涙を拭う。

「嬉しい」

星が。

ぱっと。

笑った。

「じゃあ」

「また会いに来ます」

「うん」

「約束」

「うん」

「約束」

星が。

手を振りながら。

去っていく。

私は。

その後ろ姿を。

ずっと。

見つめていた。

そして。

姿が見えなくなったあと。

小さく。

呟いた。

「……おかえりって」

「いつか」

「言えたらいいね」

◇◇◇

その夜。

陽向と。

二人になってから。

私は。

今日。

星に言われたことを。

話した。

「ママがちょっと帰ってきたみたい……か」

陽向が。

静かに呟く。

「うん」

私は。

泣き疲れて。

陽向の肩へ。

頭を預けていた。

「すごいな」

「何が?」

「星ちゃん」

「……うん」

「何も知らないのに」

陽向が。

私の手を。

そっと握る。

「ちゃんと美月のこと」

「見つけてる」

胸が。

温かくなる。

「顔じゃなくて」

「声じゃなくて」

「美月の中身」

「……」

「やっぱ」

陽向が笑う。

「親子なんだな」

私は。

陽向の肩に。

もう少しだけ。

身体を寄せた。

「今日ね」

「うん」

「すごく嬉しかった」

「陽向と星が」

「話してるの」

「うん」

「ずっと見たかった景色みたいだった」

前の人生では。

叶わなかった。

でも。

今。

叶った。

「陽向」

「何?」

「星に」

「ありがとうって言ってくれて」

「ありがとう」

「俺」

陽向が。

少し考える。

「まだ言えてないけど」

「?」

「本当は」

私を見る。

「星ちゃんに」

「俺もありがとうって思ってる」

「どうして?」

「だって」

陽向が。

優しく笑う。

「昔の美月のこと」

「いっぱい教えてくれたから」

「……」

「俺が知らない美月」

胸が。

ドクン。

「これから」

陽向が。

繋いだ手を。

少し強く握った。

「もっと知りたい」

私は。

笑った。

「うん」

「教える」

そして。

心の中で。

思った。

星。

あなたが。

気づいてくれた。

顔が違っても。

声が違っても。

ママに似ていると。

だったら。

いつか。

もしかしたら。

本当のことを。

伝えられる日が。

来るのだろうか。

――私が。

――あなたの母親だと。

そんな希望が。

ほんの少しだけ。

胸の中に。

生まれ始めていた。