「ねえ、聞いてあゆな! 転校生が来るんだって。しかも男子で、なんと……!」
教室のざわめきの中、親友の舞(まい)がスマホの画面を突きつけてきた。
だが、あゆなは自分の席でぼんやりと窓の外を眺めていた。
高2の春。
新学期の浮かれた空気になじめないのは、心のどこかにずっと、忘れられない男の子がいるからだ。
春樹(はるき)。
小学5年生のとき、突然引っ越していった優しい幼馴染。
あの頃の春樹は、いつも泣き虫なあゆなを笑顔で慰めてくれる、お日様みたいな男の子だった。
――ずっと、好き。
「あゆな、聞いてる? ほら、もうすぐ先生来るよ!」
舞の慌てる声にハッと前を向くと、担任の先生に連れられて、一人の男子生徒が教室に入ってきた。
黒髪が綺麗に切り揃えられ、すっと通った鼻筋。
何より、目を見張るほどの高身長だった。
背筋がピンと伸びていて、シルエットだけでもただ者ではないオーラを放っている。
息を呑むクラスメイトたち。あゆなもまた、その端正な顔立ちに目を奪われた。
「今日からこのクラスに転入してきた、春樹。……よろしく」
低い、落ち着いた声。
その名前を聞いた瞬間、あゆなの心臓が跳ね上がった。
はるき……?
ま、まさか……ね……。
春樹がゆっくりと教壇から教室を見渡す。
そして、その視線が一直線にあゆなをとらえた。
あゆなは思わず立ち上がりそうになり、息を止める。
――ねえ、春樹、私だよ、あゆなだよ……!
しかし、目の前にいる春樹は、あゆなが知っている優しい笑顔を浮かべてはくれなかった。
彼はあゆなと目が合うと、すっと目を細め、氷のように冷たい視線を向けたのだ。
そして、あゆなに聞こえるか聞こえないかの小さな声で、こう呟いた。
「……相変わらず、ちっちぇーな」
「え……?」
あゆなは自分の耳を疑った。
席につく春樹の背中は、昔の温かい面影など微塵もなく、触れれば凍りつきそうなほどクールな“塩対応”に満ちていた。
(うそ……。私の知ってる春樹は、あんなに優しかったのに……っ!)
胸の奥がキュッと締め付けられる。
再会の喜びは一瞬で消え去り、あゆなの高校生活は、波乱の予感とともに幕を開けたのだった。
教室のざわめきの中、親友の舞(まい)がスマホの画面を突きつけてきた。
だが、あゆなは自分の席でぼんやりと窓の外を眺めていた。
高2の春。
新学期の浮かれた空気になじめないのは、心のどこかにずっと、忘れられない男の子がいるからだ。
春樹(はるき)。
小学5年生のとき、突然引っ越していった優しい幼馴染。
あの頃の春樹は、いつも泣き虫なあゆなを笑顔で慰めてくれる、お日様みたいな男の子だった。
――ずっと、好き。
「あゆな、聞いてる? ほら、もうすぐ先生来るよ!」
舞の慌てる声にハッと前を向くと、担任の先生に連れられて、一人の男子生徒が教室に入ってきた。
黒髪が綺麗に切り揃えられ、すっと通った鼻筋。
何より、目を見張るほどの高身長だった。
背筋がピンと伸びていて、シルエットだけでもただ者ではないオーラを放っている。
息を呑むクラスメイトたち。あゆなもまた、その端正な顔立ちに目を奪われた。
「今日からこのクラスに転入してきた、春樹。……よろしく」
低い、落ち着いた声。
その名前を聞いた瞬間、あゆなの心臓が跳ね上がった。
はるき……?
ま、まさか……ね……。
春樹がゆっくりと教壇から教室を見渡す。
そして、その視線が一直線にあゆなをとらえた。
あゆなは思わず立ち上がりそうになり、息を止める。
――ねえ、春樹、私だよ、あゆなだよ……!
しかし、目の前にいる春樹は、あゆなが知っている優しい笑顔を浮かべてはくれなかった。
彼はあゆなと目が合うと、すっと目を細め、氷のように冷たい視線を向けたのだ。
そして、あゆなに聞こえるか聞こえないかの小さな声で、こう呟いた。
「……相変わらず、ちっちぇーな」
「え……?」
あゆなは自分の耳を疑った。
席につく春樹の背中は、昔の温かい面影など微塵もなく、触れれば凍りつきそうなほどクールな“塩対応”に満ちていた。
(うそ……。私の知ってる春樹は、あんなに優しかったのに……っ!)
胸の奥がキュッと締め付けられる。
再会の喜びは一瞬で消え去り、あゆなの高校生活は、波乱の予感とともに幕を開けたのだった。



