今日の恋、予報します。

 そして。


 高校三年生の始業式。


 桜が満開だった。


 新しい学年。


 新しい教室。


 クラス表を確認して。


 俺は、自分の名前の少し下にある君の名前を見つけた。


 「…………」


 同じクラス。


 それだけで、嬉しかった。


 けれど。


 俺はまだ、君に自分の気持ちを伝える勇気を持てないでいた。


 好きだと言ったら。


 君は困った顔をするんだろう。



 始業式の日。


 春の日差しが照らす中庭。


 俺は君を見つけた。


 「…………」


 桜の木の近く。


 風が吹いて。


 桜の花びらが舞う。


 その中に。


 君が立っていた。


 そして。


 頭の上に、一枚の花びら。


 「…………」


 思わず笑ってしまった。


 なんだよ。


 そんなところに乗せて。


 君は気づいていない。


 俺は少し迷って。


 でも。


 気づいたら、君のところへ歩いていた。


 「…あの」


 「え?」


 君が振り返る。


 俺は少しだけ緊張しながら言った。


 「動かないで」


 「……え、なに、え?」


 そっと手を伸ばす。


 髪に触れないように。


 頭に乗った桜の花びらを取る。


 「ついてた」


 「……え?」


 君が驚いたように俺を見る。


 その顔が。


 たまらなく愛おしかった。


 「これ」


 花びらを見せる。


 君が小さく笑った。


 「ありがとう」


 「うん」


 それだけなのに。


 心臓がうるさい。


 高校二年生。


 プリントを拾ってくれた君に恋をした。


 そして今。


 その君が、俺の目の前にいる。


 胸の奥が、また強く鳴った。


 ――ああ。


 やっぱり好きだ。


 何度でも。


 君を見るたびに。


 そう思う。


 そのとき。


 ポケットの中で、スマホが震えた。


 「……?」


 俺はスマホを取り出した。


 画面に表示されたのは。



 《今日の恋愛天気予報》

 ☀️ 快晴

 『今日は、彼女があなたを好きになるでしょう』



 「…………」


 一瞬。


 意味が分からなかった。


 「彼女?」


 画面を見つめる。


 そして。


 もう一度、君を見る。


 少し恥ずかしそうに笑っている。


 「…………」


 胸の奥が、いっぱいになる。


 「……そっか」


 小さく笑った。


 この予報が本当なら。


 今日。


 君も俺を好きになる。


 そう思っただけで、嬉しかった。


 でも同時に。


 ほんの少しだけ怖かった。


 もし予報が外れたら?


 もし、君が俺を好きにならなかったら?


 そんな不安もあった。


 だから俺は。


 予報を信じるだけじゃなくて。


 自分から君との距離を少しずつ縮めていこうと思った。


 名前を呼んで。


 話しかけて。


 笑わせて。


 君の隣にいる時間を増やして。


 そして、いつかちゃんと。


 俺の言葉で伝えたい。


 好きだって。


 予報じゃなく。


 誰かに決められた未来じゃなく。


 俺自身の気持ちとして、君に届けたい。


 ――そして。


 あの日から、俺たちの恋は始まった。


 何度もすれ違って。


 何度も予報に振り回されて。


 それでも最後には。


 君は俺の隣にいてくれた。


 今思えば。


 恋愛天気予報なんて、なくてもよかったのかもしれない。


 だって、俺が恋に落ちた日から。


――ずっと、君は俺の一番好きな人だから。