沈黙のシークレット・コード



翌日の昼休み。中庭のベンチで、夏音は翔太郎の姿を目で追っていた。



クラスの男子たちと楽しそうに笑いながらパンを頬張る翔太郎。



その姿はいつだってかっこよくて、自然と胸が締め付けられる。



夏音は自分の胸を軽く押さえた。 ――今、キュンってした(顎下で手をグーにする、の少し手前で、胸元でぎゅっと)。



いや、違う。正確には、さっきから女子のグループが翔太郎の方をチラチラ見ながらキャーキャー言っているのが見えて、胸がキュッとなったのだ。



夏音は腕を自分でつかむ。 ――嫉妬。



「夏音、どうかしたの? そんな怖い顔して」



隣で弁当を食べていた親友が首をかしげる。



夏音はハッと我に返り、慌てて両手の人差し指で自分の口角をあげた。 ――あなたのその笑顔が好き(を真似してごまかす)。



「ううん、なんでもないよ!」



ごまかしたものの、モヤモヤは消えない。



放課後、廊下ですれ違ったとき、夏音はわざと前髪を整えるフリをした。 ――ちょっとフキゲン中……。



「お、お疲れ、夏音」



翔太郎が何か察したように声をかけてくる。



しかし、夏音は目を逸らし、耳たぶを触ってみせた。 ――ゴメン。



不機嫌になってしまった自分への後悔と、周りの女子への焦りが入り交じる。



それでも翔太郎は、優しく笑ってその場を去っていった。



その背中に向かって、夏音は心の中でそっと指で手のひらをたたく。 ――あとで詳しく教えて、ねえ、翔太郎。