「うわぁ……! 何にもないっ!!」
週末の午前中。
俺の部屋に一歩足を踏み入れた陽菜は、文字通り目を丸くして固まっていた
ワンルームの空間にあるのは、部屋の隅にたたまれた薄い布団と、小さなローテーブル、それと数冊の大学の教科書だ
テレビも、冷蔵庫も、男の一人暮らしにしても度が過ぎるほど、そこは生活感のない「もぬけの殻」だった
「あはは……。だから言っただろ、何もないって」
「何もないにも程があるよ! 朔夜くん、本当にここで生活してるの!? 仙人か何かなの?」
陽菜は呆れたように笑いながらも、どこか心配そうな目で俺の部屋を見渡した
まさか、寿命を売った一千万円が口座に丸々残っているなんて言えない
俺にとっては、ここは数ヶ月の間だけ雨風をしのげればいい「仮宿」に過ぎなかったんだから



