『付き合ってない、たぶん』上

これ以上ない最高の新学期のスタートに、俺はこれっぽっちも、これから何かが変わるなんて思っていなかった。

でも、その日の夜。

自分の部屋で、一人きりでスマートフォンを見つめている蓮の姿があった。

『ピロン』

誰もいない静かな部屋に、冷たい電子音が響く。

その液晶の光に照らされた蓮の顔には、迷いは一切なかった。

(……これで、決まりだな)

蓮は静かに、そして誰にも寄せ付けないほど重い「覚悟」を決めた。

スマホを裏返し、ケースの裏のカップルプリに目を落とす。

恥ずかしそうに手で顔を隠して、自分の頬にちゅーをしてくれている、世界で一番大切な幼馴染の笑顔。

「……わりぃ、春」

ぽつりと呟いた蓮の声は、夜の闇に消えていった。