『付き合ってない、たぶん』上

「おい、荷物詰めた奴からバス乗れよー!座席は適当にな!」

遠征用の大型バスの前で、顧問のどなる声が響く。

今日から、サッカー部の地獄の夏合宿が始まる。

いつもなら、当たり前のように蓮の隣をキープするはずだった。

だけど、今回はタイミングが悪かった。

俺がトイレに行っている間に、部員たちが我先にとバスに乗り込んでしまったのだ。

俺がバスの通路を進むと、すでに蓮は、別の部員とふたりで座っていた。

「あ、春。悪い、ここ埋まっちゃったわ」

「ううん、全然!じゃあ俺、あっち座るね」

俺は努めて明るく笑って、3列ほど離れた、通路側の空いている席に座った。