『付き合ってない、たぶん』上

俺はマイクを持ったまま、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で拓海を見た。

彼女。

拓海に、彼女。

(じゃあ、あの合宿の時のベタベタした距離感はなんだったの……!?)

「あいつら、やっとくっついたな。マジで見てるこっちの理性が崩壊するかと思ったわ」

拓海は、ステージの上で呆然と立ち尽くす、顔がトマトみたいに真っ赤になったダブルエースのふたりを見上げて、

本当に嬉しそうに、悪戯っぽく笑った。

「まぁ、何はともあれ……本当によかったな、お前ら!」

拓海のその言葉を合図に、陸や凛、そしてサッカー部の部員たち、

全校生徒からの割れんばかりの拍手と祝福の嵐が、ステージの俺たちに降り注ぐ。

「……春」

気がつくと、蓮がマイクをステージに放り出し、俺の身体をがっしりと腕の中に閉じ込めていた。

合宿のバスの中で、1ミリの隙間もなく抱き合っていた時と同じ、

いや、あの時よりもずっと強くて、熱い体温。

「……もう、絶対に離さねぇからな」

耳元で囁かれた蓮の低い声に、俺の理性は今度こそ、跡形もなくとろとろに溶かされていった。