『付き合ってない、たぶん』上

(……あー、もう、全然声が出ない……!)

ステージ裏に呼び出される前の昼休み。

春は誰もいない旧校舎の階段の踊り場に隠れて、一人で頭を抱えていた。

手元のメモには、何度も書いては消した蓮への告白の言葉が並んでいる。

「蓮、ずっと前から好きでした。……いや、固すぎる。蓮、俺と付き合って……って、男同士なのに急にそんなこと言ったら、気持ち悪がられて速攻で幼馴染終了だろ……!」

壁に額をコツンとぶつけ、春は泣きそうになっていた。

中等部からずっと、一番近くにいた。

サッカー部で一緒に走って、バカなことで笑い合って、

距離感がバグってるって周りに呆れられる時間が、本当は世界で一番大好きだった。

(もし振られたら、明日から部活だって行けなくなる。……でも、蓮が拓海と付き合うのを見てるくらいなら、いっそ嫌われた方がマシだ……!)

春は胸の前でぎゅっと拳を握りしめ、ステージでの本番を想定して、誰もいない空間に向かって精一杯の声を絞り出した。

「蓮! 俺、お前のことが――」 

その頃、新校舎の裏にある部室棟の屋上では。

「……はぁ」

蓮が、手すりに背中を預けて深くため息をついていた。

その手には、ぐしゃぐしゃに握りしめられた、告白のセリフが書かれたルーズリーフがある。

「春、お前が拓海のことを好きなのは知ってる。……いや、知ってるけど奪い取る、か? ……クソ、そんな言い方したらあいつ怯えるだろ……」