『付き合ってない、たぶん』上

一方その頃、前を歩く蓮は――。

(……っぶねぇ!!! マジで心臓止まるかと思った……!!!)

蓮は必死でポーカーフェイスを維持しながら、内心で狂ったように絶叫していた。

寝起きで無防備な春の顔だけでも破壊力抜群なのに、追い打ちをかけるような『気持ちよかった』というセリフ。

掴んだカバンの持ち手が、手汗でじっとり滲むほど動揺していた。

(さっき春が言ってた『他に深く想ってる人がいる』って奴……やっぱり拓海のことなのか……? あいつに触られて顔真っ赤にして逃げ出すくらいだもんな……。なのに、なんで俺にはこんなに無防備に抱きついて寝られるんだよ……)

春が自分に抱きついて眠っていた時の、あの甘くて温かい体温の余韻が残る背中に、

切ない独占欲と、拓海への猛烈な嫉妬がどろりと渦巻く。

(嫌だ。あいつを他の奴に渡したくねぇ……。俺だけを見てろよ、春……)