『付き合ってない、たぶん』上

蓮が言っていた『絶対に、叶わない相手だから。あいつ、めちゃくちゃ無防備で、俺のこと、ただの友達としか思ってねぇから』という言葉が、胸の奥で大音量でリピート再生される。

(蓮の好きな人って、やっぱり拓海なんだ……。俺がさっき陸たちに『その人、他に深く想ってる人がいるみたいだから』って言ったの、寝てた蓮には聞こえてないよね……?)

胸を突くような苦しさを必死に誤魔化すように、俺は少し目をこすりながら、ふにゃりと愛想笑いを浮かべた。

「蓮の肩、広くてあったかくて気持ちよかった。ありがとね」

「っ……! バ、バカ、変なこと言うな。早く行くぞ!」

蓮は急に声を荒らげると、耳まで真っ赤にしてバッと座席から立ち上がった。

そして、網棚から二人のカバンをひったくるようにして掴み、早足で通路を歩いていく。

(……ほら、やっぱり怒らせた。拓海のことが好きな蓮にとって、俺からのこんな言葉は迷惑以外の何物でもないんだ)

俺は心の中で涙を堪えながら、慌てて蓮の後ろを追いかけた。