『付き合ってない、たぶん』上

「お疲れー。じゃあ、帰りのバス、適当に座っていいぞ」

顧問のゆるい声とともに、地獄の合宿が幕を閉じた。

帰りのバスは、行きとは違って、みんな疲れ果てて静かだ。

俺は、当たり前のように蓮の隣の席に座った。

「……ふぅ」

隣を見ると、蓮はすでにシートに深く体を預け、静かに目を閉じている。

トレセンや練習試合で、誰よりも走り回っていた蓮。

濡れた前髪の隙間から見える寝顔は、少し幼くて、無防備で。

(……かっこいいなぁ)

見惚れてしまいそうになるのを慌てて誤魔化すように、通路を挟んで隣の席を見る。

そこには、付き合いたてホヤホヤの陸と凛が、仲良く一つのイヤホンを分け合って座っていた。

「あ、春。蓮、もう寝ちゃった?」

陸が、ひそひそ声で話しかけてくる。

「うん、完全に爆睡。相当疲れを溜めてたんだね」

俺も、声をひそめて返す。