『付き合ってない、たぶん』上

「春?お前、なんか顔色悪くね?」

蓮が、心配そうに顔を覗き込んでくる。

「あ、ううん!ちょっと、枕が変わって、寝付けなかっただけ!」

慌てて、いつものお調子者の笑顔を作る。

だけど、蓮の綺麗な顔がすぐ近くにあるだけで、昨日の『好きな人』のことがチラついて、

胸がギューッと苦しくなった。

大部屋の隅では、拓海や陸たちが、こちらをじっと見つめていた。

「おい、見ろよ……」

「春の奴、完全に寝不足じゃん。昨日の蓮の話、聞いてたな、これ」

「両片想い、拗らせすぎだろ……」

周りの奴らのヒソヒソ声なんて、今の俺たちの耳には、一切届いていなかった。

「ほら、行くぞ」

蓮が、俺の頭をぽん、と叩いて、先に部屋を出ていく。

その後ろ姿を見つめながら、俺は小さくため息をついた。

(だめだ、ちゃんとしなきゃ。俺は、ただの幼馴染なんだから……)

グラウンドに出て、朝の空気のなかでランニングを始める。

だけど、寝不足の頭は、思うように働いてくれなかった。

「……っ」

足元がもつれて、派手に転びそうになる。