『付き合ってない、たぶん』上

俺の笑顔が、ぴたりと凍りついた。

「最終審査はほぼメンバーとの顔合わせ。その事務所、東京に拠点を移すのが、所属の絶対条件だからだ。……だから、俺は東京に行く。お前を、ここに残して」

夕暮れの教室に、静まり返るような沈黙が降りてくる。

上京。

東京。

学校を辞める。

俺を、置いていく。

さっきまであれほど嬉しかったはずの「オーディション合格」という言葉が、一瞬にして、

二人の「当たり前の日常」をすべて粉々に打ち砕く、あまりにも冷酷な刃へと姿を変えた。

俺は、何も知らなかった。毎日の部活で、同じクラスの教室で、蓮がどれだけ重い絶望と覚悟を一人で背負っていたのか。

拓海や陸や凛が、どうしてあんなにも切なそうな目で俺を励ましてくれていたのか。

「……ごめんな、春」

蓮の低い声が、夕暮れのチャイムの音にかき消されるようにして、静かに響いた。