『付き合ってない、たぶん』上

「なぁ蓮、次って移動教室だっけ」

「ん、そう。化学室。教科書貸してやるから、はよ起きろ」

男子校のむさ苦しい昼下がり。

高校2年生の教室は、部活帰りの汗の匂いと、気怠い空気で満ちていた。

その中で、俺――春の定位置は、蓮の膝の上……の一歩手前、

蓮の机の端っこだ。

当たり前のように蓮の肩に肘を乗せ、スマートフォンを覗き込む。

蓮もまた、邪魔そうにする素振りすら見せず、

俺の腰のあたりに自然と腕を回していた。

「おいお前ら、またやってんのか」

呆れた声をあげたのは、クラスメイトの拓海だ。

「お前らさ、いっつも距離感おかしいだろ。ぶっちゃけ付き合ってんの?」

その言葉に、俺と蓮は同時に声を揃えた。

「「は? 違うし」」

「息ぴったりかよ! じゃあなんで蓮は春の腰に手ぇ回してんだよ。春も蓮にベタベタくっつきすぎ!」

「幼馴染だし。男子校なんだから普通だろ」

蓮がいつも通りの低い声で冷淡に返す。

俺も「そうそう、ただの幼馴染~」と笑って受け流した。