婚約破棄された悪役令嬢ですが、最推しの騎士様を愛でるのに忙しいのでノーダメージです!〜推しグッズ工房を立ち上げたら、なぜかご本人から甘やかされています〜

寮の自室に戻った私は、豪華な天蓋付きベッドにバフッ!とダイブするように身を沈めた。
けれど、最高級の絹のシーツの肌触りさえも、今の私には現実味を欠いている。

「落ち着け、アルマデリア。泣き叫ぶのは、すべてを整えてからでも遅くない。深呼吸よ。スッ、ハァー……よし!」

私は自分に言い聞かせ、記憶の断片を拾い集める。

アナザーストーリーへの分岐フラグは、今日の会話でへし折ってやったと仮定しよう。
『改めて』と殿下は言っていたけれど、この時間になっても呼び出しはかかってないし。
そもそも前世を思い出したという点から言っても、従来のアルマデリア的思考……つまり殿下への盲目的な執着は消えた。

とすると……一応、本編ルートに戻れているのかな。
今が春季休暇中ってことは、一ヶ月後には王立学園の新学期が始まってしまう。

そして、平民出身の、のちの天才哲学者エリーゼ・ミラベルが王立学園に編入してきて、王子や騎士団長たちと恋に落ちる――それが『恋と真理のエトワール』のメインストーリーだ。

そして私、アルマデリアは、王子の婚約者である悪役令嬢的立ち位置。
彼女に嫉妬し、醜悪な策を巡らせ、そして一年後の婚約披露パーティで、奈落へと突き落とされるのだ。

まあ、わりとよく聞く、典型的な悪役令嬢の末路である。

けれど……今の私には、殿下への執着など欠片もありません!
おほほほほ!

なぜならば、私の推しは、レイナルド・シュタイナー。
彼がエリーゼと結ばれるルートも、あるいは主君である殿下の愛を陰から見守るルートも、すべてが私にとっては至高のご褒美だった。

彼が幸せであるなら、その隣にいるのが私でなくても構わない。
いや、むしろ彼を遠くから見つめ、その尊さに涙することこそが、私の真なる幸福なのだ(後方腕組み限界オタク面)。

「そうよ……愛を独占する必要なんてない。私は、この世界で、推しを崇める哲学を見出すことができる……!」

冷静に考えれば、これは私にとって最大のチャンスかもしれない!

原作でのレイナルドは、王子ルートでもエリーゼに協力的だった。
王子とエリーゼが結ばれれば、レイナルドも彼らを支える立場で幸せになれる。

そして何より――レイナルドルートでは、彼は最後にあの氷が溶けるような極上の笑顔を見せてくれた。

あの笑顔をもう一度見たい。
生で。
絶対に!!
生で。
大事な事だから二回言っておく!

つまり……

「エリーゼの恋を応援すれば、推しが幸せになる……!?」

我ながら名案だと思った。
私ってば天才か?
さらに、私が悪役にならなければ、断罪エンドも回避できる。
まさに一石二鳥である。