通りすがりの俺様

「そ、そうですね。
 ありがとうございました。

 お疲れ様でーすっ」
と早口に言って、いずるはエントランスに向かおうとした。

「鳴沢」
「え? はい」
といずるは足を止めた。

「連絡先を教えろ」
「な、なんでですか?」

「……お前、誰かに狙われてるだろ」

 初耳ですっ!

「昨日、物陰からお前が帰宅するのを窺ってるやつがいた。
 そのあと、俺の後をつけてきた。

 ちょっとドキドキした」

 いや、なに楽しんでるんですかっ。

「うちの家を窺ってる泥棒とか?」

「それだったら、俺の後をつけてこないだろ?
 お前を送ってきた俺の正体が知りたい、とかじゃないのか?」

 お前との関係性とか、と言うので、
「えっ、まあ、そこは他人なんて大丈夫じゃないですか?」
と言って、

「……いや、会社の先輩だろ」
と言われる。

 そうでしたね……。

 無礼なやつだな、という顔をしたあとで、一鷹は言う。

「なんかあったら、危ないだろ。
 連絡してきたら、駆けつけてやるから」

「えっ?
 なんでですか?」

 一鷹は渋い顔をし、
「たまたまだが、関わった以上、なんか放っておけないだろ」
と言う。

 イケメンすぎて怖い人だと思ってたけど、意外といい人だな、
と思いながら、いずるは言った。