翌朝。
いずるは社屋の外にある自動販売機の横でなにか飲んでいる一鷹を見た。
昨日はありがとうございます、と言わなければ……。
でも、話してるところで、いきなり何処からか水内さんの取り巻きの人たちが現れたら、威嚇されそうで怖い。
いずるが周囲を窺いながら、一鷹に近づこうとしたとき、
「なにしてるの?」
と背後で男の声がした。
振り向くと、井田が立っていた。
酔っていない彼は普通に爽やかで、
「あんなに張り切ってたのに残念だね」
と笑っていずるに言う。
……そうだ。
私、張り切って、特撮ヒーローのオープニングソングを歌おうとしたのに、ゲロ吐いて帰った人になってたんだったな。
「鳴沢さんってさ。
美人でお嬢様っぽいから近寄りがたいってみんな言ってたんだけど。
意外と面白いんだね。
今度、またみんなで呑みに行こうよ」
「あ、はい。
ありがとうございます」
じゃあね、と去って行く井田に頭を下げた。
そんなやりとりを、こちらに気づいたらしい一鷹が見ていたので、いずるは慌てて駆け寄る。
「おはようございますっ。
昨日はありがとうございましたっ」
「いや、ついでに俺も帰れたからよかった」
手にしていた缶コーヒーを一口飲んだ一鷹は遠くを見つめて呟く。
「微糖って……、全然、微じゃないよな」
すごく思慮深そうな顔で、なに言ってんだろうな、この人。



