通りすがりの俺様





 それじゃ、どうも~と愛想よく網代木たちは矢端と満と高石に頭を下げた。

 えーと。
 ちょっと気になるんですけど、網代木さん。

 別館への連絡通路がある階、通り過ぎたんですけど。

 なんでここで降りたんですか、と思っていると、案の定、先輩たちが去ったあと、こちらを振り向いて言う。

「あんた、今朝、水内さんと朝ごはん食べに行ってたでしょっ」

 なんで、二人で朝ごはん食べてるのよっ、と勘繰られる。

「いえいえ。
 朝、迎えに来ていただいただけで……」

「朝迎えに来てもらうだけでも、ラブラブな感じじゃないっ」

「いやあ、ラブラブというよりは……」
といずるは腕組みして考える。

「ハラハラドキドキというか」

 小野寺が、
「恋のはじまりって感じね」
と言う。

 もうさっきのあれで、完全に矢端に傾いたらしい彼女は他人事のように笑っている。

 いや、そのハラハラドキドキじゃないんですけど。

 あの高校生。
 本人は知らないかもしれないけど。

 私の《《例の件》》の関係者だったようだ。

 ただ、それで何故、誰が、彼の自転車に向かって私を突いたのかはわからないのだが――。

 ……まさか。
 二人いっぺんに始末しようと?

 いや、自転車に激突して、二人で転んだだけで、始末できるかな?

 っていうか、ぶつかるかどうかもスレスレだったような?
といずるが考えている間に、小野寺が網代木に言っていた。

「もう水内さんは諦めなさいよ。
 この会社、他にもイケメン多いんだし。

 さっさと乗り換えた方がいいわよ。
 あ、でも、矢端さんはやめといてね」