通りすがりの俺様

「そうなんだが。
 不思議だな。

 お前、食べないのなら、飲み物だけ頼むか」
と言われて、いずるは頷く。

「じゃあ、ホットの紅茶、レギュラーで」
 そう言いながら、いずるは、また思っていた。

 ……罠だ。

 きっと、これはなにかの罠なんだ。

 だって、人生で一番のピンチのときに、すごいイケメンが颯爽と現れて、助けてくれたり。

 無理して会いに来てくれたり。

 そんな莫迦な。

 だから、これはきっと罠なんだ。

「やっぱり、犯人は水内さんですね?」

 思わず口からついて出てしまった言葉に、レジ前まで来ていた一鷹はメニューを見ながら振り返らずに言う。

「うん。
 なにがどうしてそうなったのか、瞬時に理解できるほどお前のことをまだ知らないから、もっと一緒にいようか。

 ラッキーセット、珈琲ホットで。
 あと、ホットの紅茶、レギュラーで」

「よく考えたら、新幹線も飛行機もない時間に車を飛ばして帰ってくるというのもアリバイ作り的ですよね」

「俺、自分の名義でレンタカー借りてるから。
 あと、まだお前死んでないよな」

 アリバイ作った意味は? 名探偵、と頭をぽんぽんとやられる。

 そのとき、いずるのスマホが鳴った。

「あ、はい。
 おはようございます。

 ――大丈夫?
 何処も痛まない?

 なにかあったら言ってね。

 これから学校?
 ギリギリで飛ばしていったりしない方がいいよ。
 じゃあ」

「……誰なんだ?」