通りすがりの俺様

 


 一鷹が車で送ってくれて、早めに職場近くに着いたので、二人でファストフードの店に入った。

 一鷹はまだご飯を食べていなかったらしい。

 お礼におごるといずるは言ったが、断られる。

「結婚前はずっと俺が出す。
 結婚したら、お前が出してくれ」

 いつ結婚する話になったのですか。

 あなたの頭の中だけで、どんどん話が進行しているようなのですが。

 これが友だちが、
「結婚が決まるときって、よくわからないチカラで、すごい勢いで流されてくから、逆らわない方がいいわよ」
と言っていたあれなのか?

 っていうか、結婚したら、お前、出してくれってなんなのですか?

 結婚したら豹変するとか?
と思いながら、二人で列に並んでいると、一鷹が言う。

「お前の金はお前が持ってていいけど。
 俺の金は、結婚したら、全部お前に渡すから。

 お前が払えって意味だ」

「えっ、いやそんな……」

「俺は節約とか得意じゃないんで、お前がちゃんとお金貯めて、家とか車とか買ってくれ」

「私も苦手です、節約」

「一生家建たないじゃないか」

 親の世話になるのは嫌だぞというので笑ってしまった。

「俺の頭の中ではもう、家が建って、お前と子どもたちと暮らしている」

 早すぎです。

「なんでだろうな。
 お前が気になる。

 好きとかよくわからないんだが。
 ともかく、最近では、人生の節目節目を思い浮かべるとき、必ず(かたわ)らにお前がいる」

「あの、まともに話すようになったの、この間なんですけど」