通りすがりの俺様

 


 さむっ。

 朝、玄関扉を開けたいずるは寒さに震える。

 首に巻いたマフラーをちょっと引っ張り上げながら、鍵をかけ、振り向いて驚いた。

 一鷹が立っていたのだ。

「……浜松にいるんじゃなかったんですか?」

「レンタカー借りて帰ってきた。
 何処の店舗にも返せるやつで」

 やっぱり心配だったから。
 夜中に思い立って帰ってきたと言う。

「なんでそこまでしてくれるんですか?」

「何故なのかは、昨日言ったろう」
とちょっと照れたように一鷹は言ったが、いずるの中では妄想が駆け巡っていた。

 いろいろ考えたあとで、いずるは言う。

「……これはなにかの罠ですか?」

「昨日、言ってないよな? それ」
と一鷹に言われる。