通りすがりの俺様

 



 あ、マイバスケット渡すの忘れた。
 いいか。
 これ持って商店街に行くか。

 いずるは風呂敷包みに包まれたマイバスケットを結局持って帰り、商店街に寄った。

 なんかいいよね。
 こういうところ。

 もうほとんど日の落ちた住宅街。
 商店街の灯りにホッとする。

 会社帰りに立ち寄ると、もう閉店間際なので、品数は少なくなっているが、ちょっとおまけをしてくれたりもするのだ。

 というか、そんなときに店主と交わす、ちょっとした会話も楽しい。

「いずるちゃん、いい舌平目入ってるよ」

 そんな鮮魚店のおじさんの言葉に、カゴに入った舌平目を見ながら、

 そういえば、水内さんが食べたそうだったな、といずるは思った。

 今日は水内さん、出会わないけど、買っちゃおうかな、と一人で食べるには多い舌平目を買った。

 一人暮らしの目眩しにもなるからだ。

「おまけしとくねー」
「ありがとうございますーっ」
と会話をしながら、チラと見る。

 奥にある大きなまな板の上にはよく磨がれた包丁があった。

 一鷹の言葉を思い出し、笑ってしまう。