通りすがりの俺様

 何故かコーラの柄の丸テーブルと椅子が自動販売機の前にあり、そこに俺様様がいつの間にか座っていたのだ。

「お前、中浦(なかうら)に言うぞ」

 やだなあ、ちょっと誘ってみただけじゃん、と井田が言う。

「鳴沢は今から、渾身の特撮ヒーローのオープニングソングを歌うらしいから、まだ帰らないぞ」

「あ、そうなの?」

 聴きたい、聴きたい、と井田が言い出す。

 なんですかっ。
 渾身の特撮ヒーローのオープニングソングってっ。

 っていうか、私の名前、ご存知だったんですねっ?

「じゃあ、楽しみにしてるねっ」
と井田に言われてしまった。

 戻っていく井田の背を見ながら、
「なんですかっ。
 渾身の特撮ヒーローのオープニングソングってっ」
と思わず叫ぶと、

「助けてやったんだろ。
 あいつ、ああ見えて、手が早いから」
と一鷹は言う。

「連れて逃げてやろうか?」
「え?」

「明日、みんなに吊し上げられてもいいのなら」
「嫌です」

「じゃあ、一緒に歌ってやろうか?
 明日、みんなに吊し上げられてもいいのなら」

「嫌です」

「まあ、そっと帰れ。
 ここ出てすぐのコンビニで待ってろ」

 送ってやる、と一鷹は言う。