通りすがりの俺様

 


「おはよう、生きてたか」

 どんな挨拶ですか。

 いずるが営業部に用事で行くと、ちょうど外出しようとしていた一鷹がそう声をかけてきた。

「いや、あれからやっぱり心配でな。
 お前、うちに住むか?」

 いやいやっ。
 なにサラッととんでもないこと言ってくるんですかっ!

 近くを通ったおじさんが、にやにや笑いながら言った。

「水内くん、なにこんなところで口説いてるのー?」

「いえ、彼女が不審者に狙われているらしいので。
 物騒だなと思いまして」

 大真面目な顔で一鷹は答えている。

 そうなんだよなー。
 この人、実は、ただただ親切な人なんじゃないだろうか。

 呑み会で、行くぞと肩を叩いてくれたときも、ただ親切で声をかけてくれただけなのかも、と思いながら、いずるは言った。

「大丈夫ですよ。
 うちの近く、いつもパトカーが隠れてるので」

「なんだ、警察にも相談してるのか?」

「いえ。
 うちの近くで一旦停止しない車を捕まえようと、いつも待ち構えてるんですよ。

 あそこ、止まらない人多いんで、いい罠になってるみたいです」

 いや、ケーサツッ、とおじさんが苦笑いする。