通りすがりの俺様

 

 一鷹は車で家まで送ってくれた。

「中に入れ。
 外から見てるから」

 それではあなたが不審者ですよ……。

 ありがとうございました、と車の前にいる一鷹に頭を下げたあとで、玄関に行きかけ――

「……上がります?」
といずるは振り返り言う。

「大丈夫だ、またにする」

 そうあっさり引き下がられると、いろいろやってもらったのに申し訳ないような、と思い、いずるはバスケットの中をごそごそやった。

「これを」
と朝食にしようと思っていたバナナを差し出す。

「近所のおばちゃんか」

 確かに近所のおばちゃんとかおばあちゃんとか、こういうことするな、と思った。

「あ、そういえば、このバスケット返さないと」

「明日返してくれたらいいから」

 じゃ、と一鷹は華麗に去っていった。

 ダークグリーンのスポーツカーが走り去るのを見ながら、いずるは、

 いや、待ってっ。
 どうやってっ!?
と気づく。

 会社にバスケットを持って行けというのか。
 あの人、わりと考えなしだな。

 いろいろと心配してくれるのはありがたいけど……。

 それにしても、不審者か。

 いずるは玄関から顔を覗けたまま、キョロキョロと周囲を窺う。

 ……まあ、思い当たる節はなくもないのだが。