通りすがりの俺様

「お前、一人暮らしなのかっ?」
「言わなかったでしたっけ?」

「でも、一軒家に帰ってったじゃないか」

「単に今、親の転勤で、他の家族がいないだけです」

「送ってやったのに、意味ないじゃないかっ」

「いやまあ、家まで送っていただけただけで、かなり安全ですよ?」

「一軒家なのに、一人暮らしだったとはっ!」

 罠だっ、と一鷹は叫ぶ。

「そう。
 そうやって、いい目眩しになるから黙ってろとお兄ちゃんが」

「そうか。
 まあ、そうだな。

 もともとは家族も一緒に住んでたんだろうし。
 たまに見かけるなら、まだいると思うかも。

 黙っておくのが賢明だな」

 そう一鷹は思い直したようだった。

「買わないのか、その舌平目」

「ああ、たくさん入ってるパックのしかないんで」

「俺も食べてやろう」

「……家には上げませんよ。
 一人暮らしなんで」

「わかってる。
 言ってみただけだ」
と一鷹は素直に引き下がる。

「家までは送るぞ」
「いや、大丈夫ですよ」
と言ったが、一鷹は真っ直ぐに、いずるを見つめ、

「守ると言っただろう」
と言う。

 ……どきりとしてしまったじゃないですか、といずるは足早に歩き出す。