通りすがりの俺様

 


「高石さん、仕事早いですね」

 荒らされたロッカーの中を見せながら、いずるが言うと、有沙は、
「嫌だ、私じゃないわよ。
 今、外出てたし」
と言う。

「ですよね。
 いや、もしかして、荒らすと言った手前、律儀に荒らしてくださったのかと」

「私がやるなら、今、やらないわよ。
 鳴沢が忘れたころにやるわ。

 ちなみに、荒らしはしないわよ。
 花を一輪入れておいて。

 ロッカーを開けた鳴沢が乙女な顔で、
『誰っ?』
 って言って、キョロキョロするの」

「素敵ですね」

 今はなにも載っていないロッカーの中の上の棚を見ながらいずるは言った。

「もうネタバレしちゃったからやらないわ」
と言う有沙にいずるは、

「じゃあ、違う物で。
 カップ麺とかでもいいですよ」

 そう言いながら、妄想してみる。

 仕事中、すごくお腹が空いているときにロッカーを開けると、ほかほかのカップ麺が。

「素敵じゃないですか」

 リアルにシーフードヌードルの香りを感じながら、いずるは言った。

「待って、それお湯入ってるの?
 気づかなかったらのびるじゃない」

「すごい匂いがするから、誰かが気づくんじゃないですか?」
と有沙と晴菜が話している。

 有沙が、
「ねえ、網代木たち呼んでこようか?」
と言った。

 彼女らがやったかも、と思っているのだろう。

「いえ。
 網代木さんたちは関係ないと思います」

「あら、意外と信頼してるのね」

 意外そうに有沙が言う。