通りすがりの俺様

 
 

 私をつけている人がいると言いますが。

 最近、誰かつけてるなと思ったら、あなたなのですが、と思いながら、いずるは一鷹を見る。

 一鷹も自動販売機で珈琲を買い、三人で話していると、満たちもやってきた。

 一鷹が、
網代木(あじろぎ)、確かに変わった名前だよな。
 そういえば、俺、最初は一鷹って名前じゃなかったんだよ」
と語り出す。

 あなたのそれは名字じゃないですけどね、と思いながら、いずるは聞いていた。

颯太(ふうた)って名前だったらしいんだ。
 ばあさんがそうつけたかったらしくって。

 自分の子どもにつけようと思ってたのに、女だったんで、つけられなかったから、俺につけようとしたらしい」

 それで生まれて数日はそう呼ばれてたようだ、と一鷹は言う。

「レッサーパンダか」
と満が言い、他の一鷹の同期たちも笑った。

 有名なレッサーパンダの風太くんのことだろう。

「その字じゃないから、レッサーパンダじゃない!」
と一鷹は言い出した。

 その字だったら、レッサーパンダなんだ……?

 なんだかギャーギャー言っていたが、頭の中ですでにレッサーパンダになっていたので、いつもほどの威圧感はなかった。