通りすがりの俺様

 


 あれは矢端といずる。

 一鷹は遠くの自動販売機前にいるいずるたちに気がついた。

 矢端め。
 俺がちょっと気になっている女に声をかけるとは。

 ああ見えて手が早いな、といずるに、
「ちょっとで、あんな感じなんですかっ?」
と悲鳴を上げられそうなことを思っていた。

 矢端が去ったあと、
「……矢端さん」
といずると一緒にいる女子社員が、きゃっきゃ、という感じで矢端の名前を出しているのが聞こえてきた。

 まさか、二人で、矢端さんって素敵ね、とか話しているのだろうか。

 気になった一鷹は、ジリジリといずるたちに近づいていく。
 すると、いずるの話し声が聞こえてきた。

「この間、不思議なことがあったのよ」

 その言葉にハッとする。
 またなにか妙なことがあったのだろうか?

 矢端に嫉妬している場合ではなかったな。
 いずるは誰かに狙われているのに、と一鷹は反省した。

 いずるの声に耳を澄ます。

「何故か、カフェオレにいっぱい具が入ってたの」

 いや、なんでだ。

「玉ねぎ」

「いや、なんでだ!」

 思わず、口に出して言ってしまい、こちらに背を向けていた二人に、ひゃっ、と驚かれる。

 振り返ったいずるが言った。