通りすがりの俺様



 社食を出たいずるはリーダーたちと別れ、晴菜と社屋の外にある自動販売機に向かった。

 別館との渡り廊下にある自動販売機だ。

 晴菜と自動販売機様が豆を挽いてくれているのを眺めていると、

「お疲れ」
と矢端がやって来た。

「お疲れ様です」

「最近、網代木(あじろぎ)たちと仲いいんだね」
と矢端は言う。

 あじろぎ……

 せぜのあじろぎ……

「そういえば、そんな百人一首みたいな人、この会社にいましたね」

「あじろぎ、詠み人の名前ですらないけど……。

 えーと。
 あの子だよ。
 さっき話してた、あのー……

 元気な女子社員」

 物腰柔らかな矢端はここでも、かなり言葉を選んだ。

「ああ、リーダーですか」

「なんのリーダー?」
と矢端に問われたが、

 水内さん親衛隊のリーダーで、私に攻撃してくる人たちのリーダーですよ、とは言えなかった。

 さすがにちょっと悪い気がしたからだ。

 ひとりは、矢端さんのファンに鞍替えしたようだし……。