通りすがりの俺様

 

 矢端にメガホンではたかれて、一鷹のファンから矢端のファンになった女子社員が言う。

「でも、気になるわ。
 鳴沢さんがどうして急にモテはじめたのか」

 参考にしたい、と彼女は言った。

「そうねえ」
と言ったリーダーは、ジロジロいずるを見たあとで、

「見た目は入社したときから特に変わってないみたいだから……。

 そうだわっ。
 金目当てとか!」
と言い出す。

「いや、何処にあるんですかっ、目当てにされる私の金!
 今、給料前ですよ!」

 今、財布に五千円もないいずるは、思わず叫んでしまった。

「なに言ってんのよっ。
 私なんて、給料日終わったら、ずっと給料前よ!」
とリーダーが対抗して叫んでくる。

 何故、そこで張り合うのですか、と思ったあとで、いずるはハッとした。

「もしかして……」

「なによっ、思い当たる節があるのっ?」

「そろそろボーナスなんで、私のボーナスを狙ってっ!」

 だが、そこで晴菜が、
「いや、そんなのだったら、入って二年目のいずるのしょぼいボーナスより、先輩方のボーナスを狙うと思うよ」
ともっともなことを言ってくる。

「それもそうね」
と頷いたリーダーは、

「じゃあさ。
 あんた、知らない間に宝くじとか買ってない?」
といずるに訊いてきた。