通りすがりの俺様

 

 始業時間になり、いずるは、あちこちの部署に書類を配って歩く。

 別館へと続く渡り廊下を歩きながら、大きな窓の外を見た。

 いい天気だなあ、とぼんやりしていると、

「おい」
といきなり背後で声がする。

 うわっ、と振り向くと、一鷹が立っていた。

「メール読んだか?」
「え?」

「無事に家に帰ったぞって、昨日、入れたのに」
「来てないですよ」

 そう言いながら、いずるはポケットに入れていたスマホを出してみた。

「ほら、来てないで……

 あっ、そうだっ。
 すみません。
 ブロックしてますっ」

「いや、なんでだっ」
 メールアドレス教えたばっかりだぞっ、と叫ばれる。

「いや~、芸能人の名前を騙る詐欺メールが多くって。
 たまたま『水内』って名前が入ってるメールもブロックしてたんですよね~」

 近くを通った満が爆笑していた。

「お前、初っ端(しょっぱな)からブロックされてんの!?」

 うるさいっ、と一鷹は怒鳴り返していたが、
「お疲れ~」
と満は話も聞かずに行ってしまう。