通りすがりの俺様

「そういうの初めて見る。
 中、どうなってんのかなっ?」

 薄情な友人だなあ。

「わからないけど。
 落書きされてたり、なにかがビリビリにされてたりとか?」

「なにがビリビリにされるのよ」

「……トウシューズ?」

 嫌がらせというと、トウシューズに画鋲なイメージだからだ。

「トウシューズ、ビリビリにするの、大変じゃない?
 あと、あんた、トウシューズ持ってきてんの?」

 いや、と言ったとき、
「誰がトウシューズ持ってきてんの?
 大人バレエやってるの?
 私もやりたい~」
と晴菜の部署の、茶髪系のサラサラロングヘアの美人な先輩がやってきた。

 同じストレートのロングヘアなのに、どうやったら、こんなサラサラになるのか、一度訊いてみたいと思っている。

 その先輩、高石有沙(たかいし ありさ)に晴菜が、
「トウシューズより面白いものが見られるらしいですよ」
と言う。

「いずる、水内さんのファンにやられてるんですって。
 ロッカーの中もぐちゃぐちゃかもってっ」

「嘘っ。
 ドラマみたいっ」

「いやあの……そうだったら、どうしようって思っただけなんで」

「でも、このロッカー、人の出入り多いから、ぐちゃぐちゃにするの難しいんじゃない?」

「……そうですよね」

 そりゃそうか、と開けようとした手を有紗が白いひんやりした手でつかむ。

 耳元で囁いた。

「……私が共犯ならできるかも」

 ひーっ。