通りすがりの俺様

 


「おはようございます~」
といつものように、ゆるっとロッカーに入っていったいずるだったが、ハッとする。

 ロッカールームは女子しかいない密室っ。

 ロッカーを開けると、落書きされてたり、ビリビラに破かれてたりとかしないだろうかっ。

「おはよう、どうしたの? いずる」

 同期の晴菜(はるな)が声をかけてきた。

 部署は違うが、同じフロアで仕事をしているので、ロッカールームも同じなのだ。

「いや――。
 ちょっと嫌がらせとかされてないかなと思って、開けるの躊躇しちゃって」
といずるは細長いロッカーの扉を見つめる。

「誰に?」

「……水内さんのファン?」

「水内さん。
 ああ、なんかちょっと濃い系のイケメンの人」

 私の好みじゃないな~と晴菜は言う。

「私は矢端さんとか、藤屋さんとかが好みかな~。
 物腰柔らかで優しそうじゃん。

 この会社、イケメン多いよね」

 ここ来てよかったっ、と言ったあとで、
「開けてみようよ、ロッカー!」
と晴菜はワクワクした感じに言う。

 ……なんで楽しそうなんだ。