通りすがりの俺様

「あれ、初めて行きましたけど、いいですね。
 こう、仕切りで囲ってあって、ひとりずつ焼くところがあって」

 なんか落ち着きました、といずるは言ったが、満には、

「それ、二人で行く意味あるの……?」
と言われてしまう。

「まあ、混んでて、結局、隣だったんですけど」
「意味ないじゃん!」

 そうですね。
 結局、二人でガッツリしゃべってしまいましたしね。

 気分は銭湯で壁越しに話す男女って感じですかね?
 石鹸を投げ合う代わりに、苦手な肉を渡したり。

「でも、いい雰囲気そうだね」

 ちょっと寂しそうに満が言った。

「いや、全然です。
 水内さんが興味あるのは私じゃないんで」

 あの人が好きなのは、スリルとサスペンスなのでは?
 いっそ、犯人が好きなのでは? と思ってしまう感じですよ。

 エレベーターから降りたあと、
「じゃあ、お疲れ様です」
と別れて、いずるはロッカーに向かう。