通りすがりの俺様

 


「卒業して初めて見たんですよね、メガホン」

 思わず、そう呟いたいずるに、一鷹が、
「いや、なんで突然、メガホンだ……」
と言う。

 いずるの回想の内容など、もちろん、知らないからだ。

「矢端さんが微笑みながら、端から彼女らをはたいて歩いたら、水内さんの取り巻きはいなくなるのではないでしょうか」

「矢端?
 事業部の?」

 なんでいきなり名前が出て来たのかわからないが、確かに人気だな、と一鷹は言う。

「俺もこの間、矢端に物を拾われて。
 これ、落としたよって微笑まれたとき、惚れそうになった」

 そこで一鷹は、ふと気づいたように言う。

「お前もああいう感じが好みなのか?」

「いや、自分の好みとかよくわからないんですけど。
 あの、ところで、なんの用なんですか?」
といずるは言って、

「……この俺に、なんの用なんですかなんて言うのはお前くらいだ」
と言われてしまった。