通りすがりの俺様

「私も何処かで王子様が見ててくれないかなとか思ったりしますよ。
 ――あ、もちろん、水内さんじゃないですから」

 彼女らを安心させようといずるはそう付け足したのだが、

「なによっ。
 あんた、水内さんじゃ不満なの!?」
とリーダーにキレられ、

「そうよっ。
 水内さんに言い寄られて断るとか、生意気よっ!」
と他の女性たちにも責められる。

 ええ~? と思った時とき、
「こら、やかましいよ、君たち」
と背後から柔らかい声がした。

 彼は一番近くにいた、ちょっとおとなしめの女性の肩を持っていた黄色いメガホンで、ポン、と叩く。

 たまに総務にも来るやさしげな長身のイケメン様だった。

矢端(やはた)さんっ」

「ここ、静かなフロアなんで響くから、お手柔らかにね」
 そう微笑んで、彼は去っていった。

 そういえば、矢端って名前だったな。

 アンケートに使うボールペンとかをとりに来る……

 確か、事業部の人、と備品伝票を思い出すいずるの前で、そのおとなしめの女性は、はしゃいでいた。

「やだっ。
 矢端さんに、メガホンではたかれちゃった!

 ――好きっ」

「いや、なんでですか」
「いや、なんでよ」
といずるとリーダーは同時に突っ込んでいた。