表通りに出たとき、いずるはいきなり、
「あんな感じですっ、つづらの中身っ」
と窓の外を指差した。
ええっ? と一鷹が声を上げ、兄が身を乗り出す。
「どれだっ?」
「あるいは、これですっ!」
「だから、どれだっ」
と一鷹に言ったときと同じことを兄は言う。
「ちょっと車を何処かにとめましょう」
といずるは二人に言った。
近くのコインパーキングに車を止め、三人で夜道を歩く。
「あとで牛丼行きませんか?」
「おっ、いいね」
一鷹と兄が夜道に眩しい光を放つ牛丼屋を見て、話しているのを聞きながら、いずるは一人、前を歩いていた。
「例えば、ここです」
といずるは通りの途中で足を止める。
そこには、ビルとビルの隙間の細い道があった。
ここ? と二人が覗き込むと、ポリバケツの上で寝ていた猫が驚いて飛び降りる。
……猫、ごめん、と思ういずるの前で、
「……あのポリバケツがつづらか」
と兄が言う。
いや、そんな莫迦な。
中身はそこにあるスナックの生ゴミと決まっているではないですか。
さすがに高騰しませんよ。
物の例えです、と思いながら、いずるは更に歩く。
「あるいは、ここです」
と今度はイタリアンの店と雑居ビルの間にある、さっきより広い道を指差した。
「こんな感じの通路をもらったんです」



