通りすがりの俺様

 

 エレベーターの中まで、一鷹のファンの先輩たちはついて来ていた。

 いずるは彼女らにとり囲まれ、早くつかないかなあ、と階数の表示を見る。

「ねえ、どうやって水内さんに取り入ったの?」

「いや、特に取り入ってません。
 昨日、送っていただいたので、そのお礼を言ってただけです」

「ああ、あんた、もしかして、昨日、ゲロ吐いて水内さんに送ってもらったって子?」

「やだ。
 私も吐けばよかった」

 ……やめた方がいいと思います。

「えっ? じゃあ、昨日、私の隣にいた子?

 あ、ほんとだっ。

 やだ。
 感じのいい子だから、ゲロ吐いたって聞いて心配してたのにっ」

 ありがとうございます。

「ちょっと、なんで水内さんなのよ。
 この社内、他にもいい人いっぱいいるじゃない。

 藤屋さんとか三浦さんとか」
とリーダー格らしい派手な女性が言う。

「あ、三浦さんって、彼女いるらしいよ」
「やだ、誰?」
と先輩たちのうち、二人の興味はそちらに移ったようだ。

 ありがとう。
 誰だか知らないけど、三浦さん。