通りすがりの俺様



 ……逃げられた、と思いながら、去って行くいずるを見送っていた一鷹が缶を捨てていると、藤屋満(ふじや みつる)が現れた。

 いずると同じ部署にいる一鷹の同期だ。

「おーまーえーっ。
 昨日、鳴沢さんを途中で連れて帰ったらしいなっ」

「誰が見てたんだ?」

 あの鳴沢をつけてた怪しいやつか?
 あれは、社内のやつだったのか?

 じゃあ、ただの噂好きなうちの社員だったのだろうか?

 だが、それで、家まで付いてきて、物陰からじっと見てたりするだろうか、と考えている間も、満はずっと騒いでいる。

「せっかく鳴沢さん誘ったのにっ。
 なんで、邪魔するんだよ~っ」

「邪魔もなにも、お前、ずっと仕切ってて鳴沢の側にも行ってなかったじゃないか」

「そうなんだよっ。
 自分で呑み会呼びかけて、鳴沢さんを誘えたのはいいけど。

 みんなに声かけた以上、盛り上げないとって思ってっ」

 ……いいやつだ。

 とりあえず、こいつじゃあ、ないようだな。
 呑み会放り出して、尾行とかしそうにないし。

「ところで、誰に聞いたんだ? 俺が鳴沢を送っていったって」