ホテルの怖い話短編集

「こっちに暮らしている彼氏に会いに来たんだって。デートの日はあいにくの雨だったけれど、アジサイを見に行くって嬉しそうにしていて……でも、それが、当時フロントで働いていた私が女性を見た、最後だった」
「なにがあったんですか?」
身を乗り出して質問する。
「女性は彼氏と喧嘩しちゃって、持っていた傘で相手の目玉を突き刺してしまったの。彼氏は重症。彼女はその後行方不明になって今でもどこにいるかわからないみたい」
「もしかしてその女性は自殺……いえ、なんでもありません」
最悪の結末を予想して両腕が粟だった。
「ま、とにかく雨の日には303号室に必ず出てくるけれど、無視していればいいから」