恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



先生なら、すぐ見つけられるんだけどな...。


「イザベラさーん!」


自分を呼ぶ声が聞こえ、そちらを向くとジョシュアが笑顔で手を振りながら駆け寄ってきた。

休日なのでさすがに制服ではなく、白いシャツに動きやすそうな黒のスラックスと、とてもシンプルな服装である。

しかし、騎士らしい姿勢の良さと清潔感からか、とても爽やかに見える。

空から照らされる太陽の光と相まって、イザベラは眩しさに目を細める。


「こんにちは、イザベラさん」

「...こんにちは、ジョシュア君」


嬉しさを隠しきれていない笑顔は、騎士というより年相応の青年らしかった。

何がそんなに嬉しいかはわからないが、会って数秒で最高の笑顔をぶつけてくるジョシュアにイザベラは困惑してしまう。

ジョシュアの視線が上から下へと滑り、最後に真っ直ぐイザベラの瞳を見て、また笑顔になる。


「今日の格好、とてもお綺麗です。僕とのデートのためにお洒落してきてくれて、とても嬉しいです!」

「あ、ありがとう...」


すごい熱量で褒められるも、これしか着ていける服がなかったことに引け目を感じ、複雑な気持ちになる。

最初から全速力で好意を振り撒いてくるジョシュアに戸惑いを隠せないイザベラは果たして今日一日、ジョシュアの好意を最後まで受け止めきれるか心配になってくる。


「それじゃあ、行きましょう。イザベラさん」


目の前に大きな手を差し出される。

一瞬躊躇うも、これも惚れ薬のため、仕事だと割り切り、ジョシュアの手を取った。

イザベラの手をその手に包むと、ジョシュアは嬉しそうに微笑みかけてくる。

ジョシュアに微笑み返すと、包み込む彼の手に、少しだけ力が込められた気がした。

手を引かれるまま、露店が立ち並ぶ通りへと歩き始める。